【記事62920】社説:大飯再稼働へ 未解決課題が多すぎる(京都新聞2017年11月29日)
 
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社説:大飯再稼働へ 未解決課題が多すぎる

 未解決の課題が多すぎないか。
 福井県の西川一誠知事が関電大飯原発3、4号機(おおい町)の再稼働に同意した。関西電力は年明けから順次、再稼働させる見通しだ。
 直線距離で約14キロ西の位置にある高浜3、4号機(高浜町)は営業運転を始めている。近接する原発の同時稼働は、東京電力福島第1原発事故があった2011年以来になる。
 再稼働による経済利益を望む地元自治体、経済界や関電の意向を受けた判断だが、安全性や事故時の住民避難計画などの課題は置き去りにされたままだ。
 とりわけ問題なのは、二つの原発が同時に事故を起こすことを想定した対応の計画がないことだ。
 大飯原発からおおむね半径30キロ圏の緊急防護措置区域(UPZ)には京都府の5市町と滋賀県高島市の一部地域が入る。
 地震や津波の被害は予想以上に広域に及ぶことは、東日本大震災の事例から明らかだ。
 本来なら、3府県合同の避難計画の作成や訓練が行われるべきだが実際はおおい町と高浜町が別々に避難訓練を行ったにすぎない。
 滋賀県の三日月大造知事は「再稼働を容認できる環境にない」と再稼働反対を表明した。こうした状況への危機感の表れであろう。
 大飯原発については、地元住民らが運転差し止めを求めた訴訟の控訴審が今月、結審した。
 この裁判では今年4月、元原子力規制委員の島崎邦彦東京大名誉教授(地震学)が原告側証人として出廷し、原発の耐震設計の目安となる揺れの大きさが過小評価されていると証言した。
 地元や周辺の住民は、予想を超える地震の可能性が法廷で指摘されたことに衝撃を受けている。
 司法判断を待たずに再稼働を決めたことにも違和感を持たざるをえない。
 西川知事は関電などに使用済み核燃料保管施設の県外立地を強く求めてきた。
 関電の岩根茂樹社長は「2018年には具体的計画地点を示す」と説明したが、福井県はこれで本当に納得したのだろうか。
 使用済み燃料を一時保管する原発敷地内のプールは今後、7年程度で満杯になるという。それまでに設置できるのか。
 誰もが知りたいことが、うやむやのままである。再稼働が進んでも、原子力利用への不信感を高める結果になっていないか。国や電力会社などはよく考えてほしい。

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