【記事89013】関電激震 高浜原発「黒い霧事件」で検察の捜査着手はいつ(日刊ゲンダイ2019年9月28日)
 
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関電激震 高浜原発「黒い霧事件」で検察の捜査着手はいつ

 これが刑事事件にならないのであれば、もはや警察も検察もいらない。特捜部は一刻も早く関係者先を家宅捜索し、立件に全力を注ぐべきだろう。27日明らかになった、関西電力経営幹部らに対する約3.2億円の“原発マネー還流事件”のことだ。

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 コトの経緯はこうだ。金沢国税局が昨年1月、関電の高浜原発(福井県高浜町)や大飯原発(同おおい町)の関連工事を請け負う高浜町の建設会社を税務調査したところ、この会社から同町の元助役、森山栄治氏(今年3月に死亡)に工事受注の手数料として約3億円が流れていたことが判明。さらに森山氏から2017年までの7年間、関電の八木誠会長や岩根茂樹社長ら役員ら6人に計約1億8000万円の資金提供が確認されたのだ。
 税務当局の調べに対し、役員らのうち4人は森山氏へ資金返却し、修正申告。森山氏も申告漏れを指摘され、追徴課税に応じたという。
 さらに、27日に大阪市の関電本店で会見した岩根社長によると、社内調査の結果、経営幹部計20人が私的に計3億2000万円分の金品を受け取っていたことを明らかにしたのだ。
 森山氏は税務調査に対して「関電にはお世話になっている」と説明したらしいが、電気料金を原資とする工事費の一部が関電幹部側に「キックバック」された格好で、どう見ても不自然なカネの流れだろう。
 呆れたのは、会見した岩根社長の発言だ。受け取ったカネについて「一時的に預かっていたが、一般的な儀礼の範囲内のもの以外は全て返却した」「(返却を)厳しい態度で拒まれた。関係悪化を恐れた」などと説明したからだ。プロ野球の「黒い霧事件」で、永久追放処分にされた池永正明投手が「受け取ったカネは押し入れにしまっていた」と釈明していたのと同じだし、修正申告しながら「預かっていた」なんて言い訳が通るはずがない。
 森山氏についても、岩根社長は26日夜の共同通信記者の取材に対し、「顔ぐらいは知っている」とトボケていたのに、きのうは一転、「社長就任後に本社にごあいさつに来られ、(カネを)直接受け取った。(原発関連工事の業者と関連している)認識はあった」などと明かしたからアングリだ。
 業界紙によると、森山氏は90年秋に高浜原発PR館で行われた15周年記念式典で、「原発誘致に力を尽くした」人物として関電役員との親睦会に出席。高浜原発の警備を行う警備会社「オーイング」(高浜町)の役員も務めていた。つまり、関電幹部が「顔ぐらいは知っている」程度じゃないのは明らかだろう。
 さらに岩根社長は「見返りとなる対価的行為はなく、発注プロセスや発注額も社内ルールに基づき適切に実施されている」とも言っていたが、見返りも何もないのに、なぜ億単位のカネを関電幹部に渡す必要があるのか。そもそも関電は昨年、事実関係を掴んでいながら、なぜ公表しなかったのか。言葉は悪いが「死人に口なし」の状況を待っていたとしか思えない。元特捜検事で弁護士の郷原信郎氏がこう言う。
 「高浜原発の工事受注に絡んで地元の有力者に巨額のカネが渡り、一部が関電幹部に還流していたのが事実であれば言語道断。工事発注や資金提供などで関電側の行為が関連していれば取締役の収賄罪が適用される可能性もある。検察は徹底的に捜査するべきです」
 関電は、〈手をつなごう 一緒に笑おう 友達になろう〉なんてCMを流していたが、経営陣が工事業者や自治体の有力者と手をつなぎ、怪しいカネをグルグル回して笑っている姿が見えるようではないか。
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