【記事89028】【社説】関電不正 原発マネーの闇を暴け(東京新聞2019年9月28日)
 
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【社説】関電不正 原発マネーの闇を暴け

 原発の立地対策にと、電力会社が地元に流した資金が、当の電力会社のトップのもとへ還流されていたという。本はといえば電気料金か。にわかには、信じ難い事件である。原発マネーの闇は深い。
 菅原一秀経済産業相のコメントを待つまでもなく「事実なら言語道断」の事件である。
 関西電力の八木誠会長、岩根茂樹社長らが、関電高浜原発が立地する福井県高浜町の元助役(故人)から二〇一八年までの七年間に総額約三億二千万円を受け取っていたことが金沢国税局の税務調査などで明らかになった。
 関電から高浜町内の建設会社に支払われた原発関連の工事費の一部が、「顔役」と呼ばれる元町助役の仲介で、還流されていたという。元助役には工事受注に絡む多額の手数料が渡っていたとみられている。電力会社から地域に流れた「原発マネー」が、巡り巡って電力会社の経営トップのもとへ−。ならば前代未聞の不祥事だ。
 原発を引き受けてくれた自治体には、電源三法交付金など巨額の原発マネーが流れ込み、「ハコモノ」づくりに注ぎ込まれ、多くの利権を生んできた。
 歳入の大部分を原発マネーに依存してきた自治体では、財政のゆがみのもとにもなってきた。
 今回、関電トップに還流されたとみられる資金も、本はといえば、恐らく電気料金だ。
 福島の事故以前、発電量の五割以上を原発に依存してきた関電は「原発停止で発電コストがかさむ」と言い、値上げをちらつかせながら「早期再稼働が必要だ」と訴えてきた。
 3・11後、再稼働した原発は計九基。このうち四基が関電の原発だ。今年四月、原子力規制委員会が、期限までにテロ対策を完了できない原発の停止を求める方針を打ち出した。その時も「電気料金を値上げする事態もある」と、幹部が不満を漏らしていた。
 経営者個人に還流される資金があれば、電気料金の維持や値下げに回すべきなのだ。
 地元住民のみならず、電力消費者に対しても重大な背信行為である。
 八木会長は三年前まで、原発推進の旗振り役である電気事業連合会の会長だった。原発そのものに対する不信も一層深まった。
 事態はもはや、社内調査の域にはない。国税、そして検察当局は速やかに摘発のメスを入れ、原発マネーによる底知れぬ汚染の闇を暴くべきである。
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