【記事90120】対応後手、関電自滅=辞任劇、1週間で翻意−覆う「事なかれ主義」・金品受領問題(時事通信2019年10月11日)
 
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対応後手、関電自滅=辞任劇、1週間で翻意−覆う「事なかれ主義」・金品受領問題

 関西電力幹部らが福井県高浜町の森山栄治元助役(故人)から多額の金品を受領した問題。関電は9日、八木誠会長、岩根茂樹社長ら幹部6人の一斉辞任を発表した。続投を表明していた両氏だが、高まる批判に1週間で翻意。またも対応が後手に回った。関電を覆うガバナンス(企業統治)不全と事なかれ主義。信頼回復の道のりは遠い。

 ◇批判噴出で四面楚歌に
 「いろいろな声を真摯(しんし)に受け止め、経営責任を明確にする方がいいと(岩根氏と)2人で相談した」。八木会長は9日の会見で、辞任の理由をこう語り、翻意は「4日」と明らかにした。
 問題発覚直後の9月27日、関電は金品受領を初めて公表。しかし、受領した幹部の氏名すら明かさなかったことから批判が集中。10月2日に再度会見し、報告書を公表したが、八木、岩根両氏は「原因究明と再発防止を図ることで経営責任を果たす」と続投を表明した。
 これが火に油を注いだ。関電の筆頭株主である大阪市の松井一郎市長は「全員退職して新しい体制をつくるべきだ」と経営刷新を迫り、福井県の杉本達治知事も「信頼関係を大きく損なう。言語道断だ」と強調。経済界からも「(関電の対応は)常識的におかしい」(中西宏明経団連会長)との声が上がり、関電は四面楚歌(そか)に陥った。

 ◇「参勤交代」も
 3度目の会見から一夜明けた10日。ある関電社員は「社内的にはこれから。何が出るか分からない」と気を引き締めた。
 調査報告書によると、2006年から18年にかけて八木、岩根両氏を含む20人が現金や商品券など3億2000万円分の金品を受領。しかし、その後も子会社幹部の金品受領や1990年代の事案など新事実が次々発覚した。
 元原発所長は取材に「年1、2回、森山氏の自宅に『参勤交代』に行っていた」と明かした。関電と森山氏とのもたれ合いは底なし沼の様相を呈する。問題を新たに調査する第三者委員会の但木敬一委員長(元検事総長)は9日、「必要なことは全部やる」と語ったが、「第三者委の調査だけで全貌を明らかにするのは無理がある」(郷原信郎弁護士)との指摘も出ている。

 ◇原発経験ない本部長
 関電は経営体制の再構築を迫られるが、原発に精通した幹部が軒並み辞めた影響は大きい。9日付で辞任した森中郁雄副社長に代わり、新しい原子力事業本部長に松村孝夫常務執行役員を充てたが、同氏は「原発の経験がない」(岩根社長)。関電は他の大手電力に比べ発電に占める原発の比率が高い。老朽原発の再稼働や中間貯蔵施設の選定などの重要課題も抱えるが、手腕は未知数だ。
 企業統治に詳しい青山学院大の八田進二名誉教授は、関電の一連の対応について「あまりにもリスク感度が鈍い。できるだけ早く経営陣を入れ替えなければ信頼回復はあり得ない。厳しい目を持つ社外取締役や、感度の高い若い人も必要だ」と話した。
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