【記事90170】関電社長に「裏の世界との決別」求めた内部告発文書(毎日新聞2019年10月12日)
 
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関電社長に「裏の世界との決別」求めた内部告発文書

 関西電力の幹部が福井県高浜町の元助役から金品を受け取っていた問題で、関電の岩根茂樹社長に今年3月以降、不正を内部告発する文書が送られていた。毎日新聞経済プレミア編集部が入手した告発文書は、原発をめぐる金が関電幹部に還流していたことを指摘し、岩根社長に「もみ消し工作」をせず、「裏の世界と決別する」よう求めていた。【毎日新聞経済プレミア・川口雅浩】
 編集部が入手した文書は4通。いずれも日付が書かれていた。3月が1通、4月が2通、6月が1通だった。
 3月10日と書かれた文書は岩根社長が宛先となっている。建設会社「吉田開発」から元助役の森山栄治氏に「利益供与された金」が「関西電力の八木(誠)会長をはじめとする原子力事業本部、地域共生本部などの会社幹部に還流されていた」と指摘。「その原資は、コストとして計上され、お客さまから頂いている電気料金で賄っている」と言及している。

 ◇「第2の日産にならないよう忠告」
 関電幹部への「利益供与」は、「協力会社への発注工事費、特にゼネコン、プラントエンジニアリング会社、警備会社等を介して渡されていた」と指摘。関電が10月2日の記者会見で公表した社内調査報告書や、その後の報道で明らかになった不正と同じ内容になっている。
 文書は6月の株主総会で、不正に関わった取締役を外し、役員人事を刷新するよう要求。要求を無視すれば、報道機関や公的機関に情報を公表すると警告し、「岩根社長、ドラスティックに英断を振って、きれいな会社になりましょう」と呼びかけた。
 そして「関西電力が第2の日産にならないよう社長に忠告いたします」と、会社法違反(特別背任)でカルロス・ゴーン前会長が逮捕・起訴された日産自動車を例示。関電が対応を誤れば「平成に続く新年号の時代における、大スキャンダルの第1号となるでしょう」と警告していた。

 ◇「最後通牒」と題した2通
 4月の日付が書かれた2通の文書は、いずれも「最後通牒(つうちょう)」の題がつき、1通は岩根社長、もう1通は常任監査役が宛先になっている。3月の文書で求めた役員人事の刷新が無視されたと批判し、岩根社長に「もう一度だけチャンスを差し上げます」などと、関電の対応を求めている。
 6月8日の日付が書かれた文書は、原発に反対する団体が宛先となっている。「原発の建設、再稼動工事の過程で、工事費等を水増し発注し、お金を地元有力者、国会議員、市長、町長等に還流させるとともに、原子力事業本部幹部職員が現金(億単位)を受け取っていた」と指摘。不正に関わった幹部を退陣させるよう、岩根社長や監査役に文書を送って求めたが、「訴えはまったく無視され」たなどと記述する。
 そして、関電について「コーポレートガバナンスがまったく機能していない、期待できない組織になっている」などと批判し、不正を公的機関や報道機関に情報提供すると述べている。この文書だけ送り主が記載され、「関西電力良くし隊一同」となっていた。

 ◇関電「第三者委で検証」
 社長に宛てた文書について関電は、経済プレミア編集部の取材に対し「岩根社長は文書を受領し、認識している」と、今年3月以降に受け取ったことを認めている。関電は国税調査をきっかけに昨年7〜9月に幹部の金品受領について社内調査を行った。このため、文書を受け取った時点で不正の事実を把握していたが、事実関係を公表せず、告発文書にも対応はしていなかった。
 関電は「(文書を受けて)改めて対応はしなかった。そうした対応が妥当だったかも含めて、会社から独立した第三者委員会で検証いただくことになる」(広報部)と話している。
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