【記事44070】「炉心溶融使うな」 東電社長の指示、4年間公表せず(東京新聞2016年6月17日)
 
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「炉心溶融使うな」 東電社長の指示、4年間公表せず

 東京電力福島第一原発事故で、炉心部が溶け落ちる「炉心溶融」が起きていたのに、「炉心損傷」と説明し続けていた問題で、当時の社長が「『炉心溶融』の言葉を使うな」と幹部に指示していたことが分かった。さらに東電は、四年前の社内事故調の調査で社長が指示した事実を把握していながら、報告書に盛り込んでいなかった。 (原発取材班)
 東電の第三者検証委員会が十六日に公表した報告書で明らかになった。
 それによると、清水正孝社長(当時)は事故三日後の二〇一一年三月十四日夜、記者会見に出ていた武藤栄副社長(当時)に、広報担当者を通じてメモを差し入れた。
 メモは炉心溶融などについて書いてあり、広報担当者は武藤副社長に「官邸から、これ(炉心溶融)と、この言葉は使わないように」と耳打ちしたという。
 これ以降、東電は溶融を示すデータがあっても「具体的な判断材料は乏しい」「判断できない」などと回答。東電は同年五月、ようやく1〜3号機の溶融を認めた。
 官邸の指示については、清水社長は検証委の複数回の聴取に「覚えていない」と答えた。清水社長が官邸の意向を勝手に、解釈した可能性もある。
 東電は社内に事故調査委員会を設置し、一二年六月に事故報告書を公表。調査の中で、炉心溶融問題で清水社長から指示が出ていたことが判明したが、掘り下げようとしなかった。
 今回の問題は、新潟県の原発の安全管理に関する技術委員会の審議の過程で浮上した。技術委は「炉心溶融をなるべく使わないよう社内に指示したのか」と質問したが、東電は一五年十一月、ヒアリングの結果として、清水社長名で「指示したことはない」と文書で回答していた。
 同県の泉田裕彦知事は「虚偽の説明で、極めて遺憾。東電は何事も包み隠さず対応していただきたい」とコメントした。

<炉心溶融> 原子炉内の冷却水喪失などにより、高温になった核燃料が溶け落ちる現象で「メルトダウン」とも呼ばれる。福島第一原発事故では1〜3号機で冷却機能が失われ、炉心溶融が起きた。事故当時の法令では、原発事故時の最も深刻な事態の一つとして、電力会社が国などに速やかに通報するよう定められていた。

(図は省略)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201606/images/PK2016061702100032_size0.jpg

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