【記事88520】原発事故 無罪判決 受け止めは?(NHK2019年9月19日)
 
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原発事故 無罪判決 受け止めは?

 東京電力の旧経営陣に対して無罪判決が出たことについての反応です。

国会事故調に参加の宇田さん「責任回避の組織 怖い」

 国会が設置した事故調査委員会に参加した宇田左近さんは「司法として個人の刑事責任がどうあるべきかという判断だったが、経営陣が何か明確に悪さをしたということは証明できなかったということだが、国会や政府などの事故の調査では東京電力の組織の問題はすでに明らかになっている」と述べました。
 そのうえで、「経営陣が知らなかった。聞いていたけど判断できなかったというのは経営する能力が足りなかったという意味になる。組織として考えたとき、責任が回避される組織というのは、国民から見るととても怖い組織なので、東京電力が信頼を回復していくということは、もう、そういう組織ではないと示していく必要がさらに強まったのではないか」と話していました。

NPO法人・原子力資料情報室「不当な判決」
 NPO法人・原子力資料情報室の松久保肇事務局長は「予想できた判決ではあるが、とても残念な結果だ」としたうえで、「事故は社会通念上想定できなかったと裁判所は認めたが、東京電力などは事故の前、シビアアクシデント対策が規制に取り込まれると運転コストに見合わないと規制に反対し、自分たちで社会通念というものをつくってきた。それを裁判所が免罪符にしてしまうことは非常に問題で、不当な判決だ」と話していました。

全原協「被災者・廃炉にきちんと対応を」

 原子力発電所などが立地する全国の市町村で作る「全原協=全国原子力発電所所在市町村協議会」の会長を務める福井県敦賀市の渕上隆信市長は、「司法の判断に対してはコメントを差し控えたいが、東京電力には、被災者や廃炉などにきちんと対応してもらいたい。また、各電力事業者には今後も原発の安全性を高めてもらいたい」と話しています。

刑法専門家「従来の判例の枠内で判断」

 刑法が専門で過失の刑事責任に詳しい明治大学法科大学院の大塚裕史教授は「原子力発電所は非常に危険な業務を行っていることを考慮して有罪と判断することも考えられたが、裁判所は、この事件を特別扱いすることなく、従来の判例を踏襲し、その枠内で判断したといえる」と指摘しました。
 無罪の判断となったポイントについては、「『長期評価』について信頼性が十分に示されていないことを指摘して、15メートルを超える津波が来るという最先端の知見に従わなかったからといって刑罰を与えるべきだとは言えないと判断したことと、確実に結果を回避するためには防潮堤の設置などではなく、究極的な原発の停止しかないと判断したことが無罪の結論に大きく影響した」と話しました。
 原発事故によって避難を余儀なくされた人たちが東京電力に対して損害賠償を求めた民事裁判では、これまで複数の判決で原発事故を引き起こすような巨大な津波を予測できたとする「予見可能性」が認められてきましたが、今回の刑事裁判の判決では認められませんでした。
 これについて、大塚教授は「刑事裁判は民事裁判とは役割が違い、組織の責任を問うものではなく、個人の責任を問うものだ。刑務所に入れなければならないほど落ち度があったかという判断になる」として、民事裁判での認定とは分けて考えるべきだとしました。
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