【記事73640】全域停電 九州は大丈夫? 供給力分散、九電「影響小さい」(西日本新聞2018年9月7日)
 
参照元
全域停電 九州は大丈夫? 供給力分散、九電「影響小さい」

2018年09月07日 06時00分
 北海道で発生した地震に伴う全域停電は、一つの発電所の緊急停止を発端に電力需給バランスが崩れ、他の発電所も自動停止して発生した。連鎖的に広域停電に陥る「ブラックアウト」という事象だが、九州でも起きる危険性はないのか。
 九州電力は「九州には7県に発電所があり、一つの発電所が停止しても、他県の発電所の供給でカバーできる」と説明する。万が一の場合は、短時間で動かせる揚水発電所の緊急稼働などで対応するという。
 北海道電力によると、地震発生時、管内では約310万キロワットの電力需要があったが、最初に緊急停止した苫東厚真発電所(厚真町)の供給力は需要の半数を上回る165万キロワットあり、需給バランスへの影響は大きかった。
 九電の場合、ピーク時の電力需要は約1600万キロワット。例えば、管内の火力で最も大きい新大分火力発電所(大分市)の供給力は約280万キロワットと、一つの発電所が占める割合は北電に比べて小さい。資源エネルギー庁幹部は「九州の場合、一つのサイト(発電所)が落ちることの影響は相対的に小さくなる」と話す。
 新大分火力発電所では2012年2月、設備のトラブルで緊急停止したが、東京電力など他電力からの緊急融通を受けるなどして停電自体、回避した。
 16年の熊本地震では、熊本、大分両県の水力発電所が一部停止。鉄塔の倒壊などの影響で最大47万6600戸が停電したが、九州全域での連鎖的な広域停電は起きなかった。九電担当者は「今後も危険がないとは言い切れないが、九電管内でブラックアウトが起きたことはない」と話した。
 一方、東京女子大の広瀬弘忠名誉教授(災害リスク学)は「ブラックアウトは送電線の事故でも起こる」と指摘する。米国では03年、一部の送電線が倒木の接触で停止し、北東部で広域停電が発生した。広瀬名誉教授は「複雑な送電網は、幹線回路一つが障害を起こしただけで全体に影響する。九州でも危険性はある」と警告した。
=2018/09/07付 西日本新聞朝刊=

KEY_WORD:IBURIHIGASHI_:KUMAMOTO_HONSHIN_:KUMAMOTO_HONSHIN_: