【記事73420】北海道地震、なぜ全域停電 復旧少なくとも1週間(日経新聞2018年9月6日)
 
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北海道地震、なぜ全域停電 復旧少なくとも1週間

2018/9/6 11:40
 6日午前3時8分ごろ、北海道南西部地方を震源とする最大震度7の揺れを観測した地震で北海道は全域が停電する異常事態に直面した。市民生活や企業活動に大きな影響が広がった背景には、大規模な火力発電所の停止があった。

■3・11でも全域停電はなし
 北海道電力によると札幌市内を含めた道内全域約295万戸が停電した。道内全域での停電は1951年の北電の創設以来初めてという。電力各社でつくる電気事業連合会も「エリア全域での停電は近年では聞いたことがない」としている。2011年3月の東日本大震災時の東北地方でも全域の停電は発生しなかった。
 今回の大規模な停電は「電力の需給バランスが崩れた」ことが原因とされる。需給バランスが崩れると、なぜこうした事態が起こるのか。
 北電は道内の火力発電所が地震により緊急停止したことが原因としている。震源の近くに位置し、石炭を燃料とする苫東厚真発電所(厚真町)は、6日未明に全号機が運転中だったが地震により緊急停止した。同発電所は165万キロワットの発電能力を持ち、地震発生当時は北海道の使用電力の半分を供給していた道内最大の火力発電所だ。この発電所の停止が大きく影響し、連鎖的に道内の火力発電所も停止した。

■常に需給調整で周波数維持
 電力は常に需要と供給が同量にならなければ「周波数」が安定せず、最悪の場合は大規模な停電が起きる。家庭などに送られる電気はプラスとマイナスが常に入れ替わっており、その入れ替わる回数を周波数と呼ぶ。この周波数を一定に保つには電力の発電量と使用量を一致させる必要があり、これが乱れると発電機や電気を使用する機器が壊れる可能性がある。電力会社は常に需要と供給が一致するように発電能力を調整して運用している。
 北電は北海道全域でこうした調整をしている。今回は大規模な火力発電所が停止したことで電力の供給量が大きく減少したことから、連鎖的に発電所を停止させた。火力発電所を稼働させるためにも電力が必要で、北電は今後は水力発電所を動かして火力発電所に電気を送ることで発電を再開させていくとしている。ただ、送電線などの被害状況によっては復旧に時間を要する可能性がある。

■本州からの送電も足りず

 菅義偉官房長官は6日の記者会見で、苫東厚真発電所に設備の損壊が見つかったことを明らかにした。世耕弘成経済産業相は同日、道全域の電力復旧に少なくとも1週間かかるとの見通しを示した。
 FONT COLOR="RED">北海道と本州をつなぐ送電線の容量も60万キロワットと道内の電力需要をカバーできるほど確保されていない。道内の泊原子力発電所(泊村)も運転を停止中で供給力に余裕はない。今回の大規模停電は、一カ所の大規模火力発電所に依存することの脆弱さが浮き彫りになった形だ。(福本裕貴、安藤健太)

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