[2021_10_09_02]<社説>首都圏震度5強 経験を備えに生かして(東京新聞2021年10月9日)
 
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<社説>首都圏震度5強 経験を備えに生かして

 2021年10月9日 07時34分
 千葉県北西部を震源とする七日夜の地震で、首都圏の一部では震度5強の揺れを観測した。地震の規模を示すマグニチュード(M)5・9の「中地震」だが、水道や交通機関などに被害が出た。弱点を補強し、将来起こり得る直下型大地震への備えにつなげたい。
 夜遅くの突然の大きな揺れに首都圏各地では、帰宅できない人が駅に集まったり、停電や水漏れ、エレベーターが停止するなどのトラブルや混乱が相次いだ。
 遠方の巨大地震だった東日本大震災と比べ、最大震度は同じでも揺れの性質が違った。揺れの時間は比較的短く、ゆらりゆらりとした横揺れはあまり感じなかった。直下型のため、緊急地震速報と同時に大きな揺れがきた。
 地震の怖さを知るには経験が一番だ。神戸市には一九九五年に起きた阪神大震災の激しい揺れを体感できる大規模な施設がある。トラウマ(心的外傷)にならない程度に恐怖感を記憶することは、日ごろの心構えにつながる。
 首都圏では「東日本大震災を思い出した」という声も多く聞かれた。揺れの性質は異なるが、十年ぶりの最大震度5強に、人々の地震に対する「経験値」は上がったのではなかろうか。
 巨大人口を抱える大都市には、特有の脆弱(ぜいじゃく)性がある。今回の地震でも、水道管の破裂が複数箇所で発生し、新交通システムの脱輪なども起きた。インフラ関連は耐震強化されてきたが、まだ不十分な点があることも分かった。
 家庭でも自治体でも民間企業でも、今回の経験を、備えを再点検する機会として生かしたい。
 M7程度の首都直下型大地震は三十年以内に発生する確率が70%程度と見積もられている。
 七日夜の地震はその数十分の一の規模だ。M6以上の地震は、日本では毎年十数回起きており、地震列島ではありふれた出来事であるともいえる。
 時期と場所を特定した「地震予知」は現状では不可能であり、今回の地震が直接、大きな地震につながるという根拠はない。
 地震に限らず、災害に日ごろから備えておくことは極めて大事なことだ。ただ、不安に付け込むような悪質なデマには、くれぐれも惑わされないようにしたい。
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