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高浜原発再稼働の是非判断へ 仮処分めぐり大津地裁

関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)の再稼働差し止めを求め、滋賀県内の住民29人が申し立てた仮処分について、大津地裁(山本善彦裁判長)は9日に決定を出す。地震対策や避難計画を含め、原子力規制委員会の新規制基準そのものの合理性が問われる。2基はすでに再稼働したが4号機はトラブルで運転を停止している。東日本大震災からまもなく5年となる中、司法判断の行方に注目が集まる。

■地震の想定は適切か?

 最大の争点は耐震設計の目安となる「基準地震動」だ。住民側は「関電は過去の地震の平均値をもとに設定しているが、最大規模の揺れを基準にすべきだ」と主張。2005年以降、基準地震動を超える揺れが全国の原発で複数回あったことも示し、予測の不確実性を訴える。

 これに対し関電は「最新の知見で基準地震動を算出し安全性は担保されている」と反論。規制委の審査を経た点も強調する。

 地震の規模に関わる断層などの特徴についても関電は「詳細に地盤を調査している」と主張するが、住民側は「地震発生前に地下深くの断層を把握することがそもそも可能なのか」と、関電の地震予想そのものに疑問を投げかける。

■施設の安全対策は十分か?

 高浜3、4号機はプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を一部使用し、プルサーマル発電を行う。MOX燃料は強い放射線を出すものの、ウラン燃料と違い再処理工程に回せず、現状では原子炉建屋内の使用済み核燃料プールで保管し続けるしかない。

 住民側は燃料プールが無防備な状態で長期間、大量に保管される危険性を重視。「大地震や津波、テロ攻撃によって損壊すれば過酷事故になる。頑丈な施設で閉じ込める必要がある」と指摘する。関電は「燃料は冠水状態で冷やし安全性を確保できる。全電源喪失を想定し給水設備なども整えている」と主張する。

■新規制基準は妥当か?

 新規制基準については「合理性を欠き、適合しても安全が保証されたとはいえない」というのが住民側の批判だ。理由の一つとして避難計画が審査対象でないことを挙げる。事故時の道路の確保や移動手段など、具体的で実効性のある避難計画がないにもかかわらず、それが審査対象になっていないからだ。

 関電は「避難計画は国や自治体が決める」とした上で「福島の事故を機に安全対策は見直されており、過酷事故に発展する危険性はない」とする。

 昨年12月の福井地裁での異議審決定は「安全性に欠ける点はない」として、新基準や規制委の審査の合理性を認めた。

 大津の前回の仮処分決定(14年11月)では、避難計画などが定まらない中で「規制委が早急に再稼働を容認するとは考えがたく、差し迫る状況にない」と申し立てを退けたが、すでに再稼働した今回は事情が異なる。地裁が具体的な争点にどの程度踏み込んだ言及をするかも注視される。

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