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規制委発足2年 委員長「科学的判断を貫く」


 原子力規制委員会の田中俊一委員長福島市出身は河北新報社のインタビューに答え、9月で発足2年となった規制委の在り方について「独立性を守るために科学的判断を貫く」と強調した。新規制基準に基づく適合性審査安全審査を実施中の東北電力女川原発2号機宮城県女川町、石巻市に関しては、耐震設計の前提となる基準地震動の妥当性が焦点になるとの認識を示した。聞き手は東京支社・若林雅人

−原発再稼働の前提となる審査の進め方などをめぐり批判や政治介入的な言動が増えてきた。
 「この仕事を引き受けた時から批判や中傷を覚悟していた。独立性は『規制の命』だ。全ての情報を公開し、透明性も確保してきた。原子力に対する人々の考え方の違いは大きいが、外部の力で判断が揺らぐことがあってはならないとの信念でやっている」
−福島第1原発の汚染水問題が解決しない。経済産業省や東京電力との連携を見直す必要は。
立案に関与せず
 「リスク低減に向け助言しているが、東電などが細部にこだわりすぎて、より大きなリスクへの対策が後回しにされる状況も見られる。ただ、規制委が対策立案にまで関与すると、自ら提案した対策を自ら監視することになり適切でない。稼働推進側と一体になることはできない」
−核燃料サイクル施設は安全審査が進んでいない。
 「サイクル施設は先行例がないため、事業者がこれまで考えたことのなかった過酷事故のシナリオや対策の整理に時間がかかり、審査申請を出し直すなどしている。国際的にも安全確保の第一義的責任は事業者にあり、最大限の努力を払うのが大原則だ。日本は、まだ不十分な面が多い」
−東北の原子力施設の多くは東日本大震災が起きた太平洋側にある。
 「今回の震源域の南側で大規模な地震が起き得るとの知見もあり、想定に入れて評価する必要がある。女川原発2号機は基準地震動を従来の最大加速度580ガルから1000ガルに引き上げたが、それで十分かどうかも今後課題になる」
−現行の放射線防護基準が福島の住民帰還を妨げているとの声もある。
 個人線量を重視
 「除染の長期目標としている年間追加被ばく線量1ミリシーベルトの水準は、1ミリ以下でないと生活できないとの誤解を招いた。避難指示解除の目安となる年間20ミリシーベルト以下なら問題はない。空間線量でなく個人線量計で実効線量を見るべきだ。放射線の問題は理由の一つだが、他の要因も大きい」
−食品の放射性セシウム濃度基準も他国と開きがある。
 「一般食品は1キログラム当たり100ベクレル以下だが、欧米では1000ベクレル超の基準。国際会議などで『日本の基準は低すぎる』と言われたこともある。日本の防護基準を国際的なレベルに見直す議論はすぐにはできないが、いずれしなければならない」

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