[2023_05_05_19]泊停止11年 北電、変わらぬ原発依存 再稼働へ膨らむ維持費、道民は負担に不満(北海道新聞2023年5月5日)
 
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泊停止11年 北電、変わらぬ原発依存 再稼働へ膨らむ維持費、道民は負担に不満

 北海道電力泊原発(後志管内泊村)で最後まで稼働していた3号機が停止してから、5日で11年となった。北電は火力発電所の燃料高騰を理由に電気料金の値上げに踏み切る一方で、再稼働後には値下げすると強調し、原発に依存する経営方針を崩していない。稼働していない原発に投じた費用は計6700億円を超えた。費用は電気料金として一般家庭や企業が負担しており、道民からは原発の存在意義を問う声が上がる。
 「長期的な観点でみると経済性は十分確保できる。まずは再稼働を最優先したい」。北電の藤井裕社長は、4月27日に札幌市内で開いた決算発表会で、泊原発の必要性を強調した。
 泊原発は2011年4月に1号機(出力57万9千キロワット)、同8月に2号機(同)、12年5月に3号機(出力91万2千キロワット)がそれぞれ停止。北電は13年7月、再稼働を目指し原子力規制委員会に審査を申請した。26年12月に泊原発3号機の再稼働を想定するが、審査は北電側の不手際もあり長期化している。
 北電が原発にこだわるのは、火発と比べ経済効率性が高いとみているからだ。北電は30年度までに全3基を再稼働し、再稼働前の水準と比べ、連結経常利益を年間220億円以上増やす目標を掲げる。
 一方、泊原発の維持管理費は膨らみ続けている。有価証券報告書によると、北電は全基停止した12年度以降、「原子力発電費」を21年度までに計6747億円計上した。原発の建設や安全対策に必要な設備投資などを分割して費用計上する減価償却費のほか、施設の修繕費、原発に関わる北電社員の給料手当などが含まれる。これに今後建設する防潮堤の建設費などが追加され、泊原発の再稼働に向けた費用はさらに増える見通しだ。
 北電の23年3月期連結決算は221億円の最終赤字となった。稼働していない原発関連の費用について、藤井社長は「将来の投資」と強調するが、赤字の要因の一つだ。それにもかかわらず、再稼働を目指し、燃料高騰を理由に電気料金を値上げする北電の姿勢に道民の不満はくすぶる。4月20日に札幌市内で開かれた電気料金値上げに対する公聴会で、北海道生活協同組合連合会の平照治専務理事(65)は「原発が止まっていても電力の供給はできていた。再生可能エネルギーへの転換を求めたい」と訴えた。「脱原発をめざす北電株主の会」代表のマシオン恵美香さん(60)は「利益を生まない無駄遣いの事業をたたむべきだ」と迫った。
 法政大の高橋洋教授(エネルギー政策)は「原発は不良債権のようになっており、損切りできずにずるずる事業を続けているように見える」と指摘。その上で「北海道には再エネ資源が豊富にあり、賢明な経営判断が求められる」としている。(三坂郁夫)
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