[2022_05_31_07]「先延ばし」の北海道電に厳しい姿勢 泊原発訴訟(産経新聞2022年5月31日)
 
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「先延ばし」の北海道電に厳しい姿勢 泊原発訴訟

 再稼働に向けた原子力規制委員会の審査が今も続く中、札幌地裁は31日、活断層の有無など複数の争点で北海道電力の最終的な主張を待つことなく、「津波対策の不備」という一点をもって運転差し止めを命じた。煮え切らない対応で主張を「先延ばし」にしてきた北海道電に、厳しい姿勢を示した形だ。
 今回の訴訟で北海道電は、規制委による審査の推移を見ながら主張立証する姿勢を貫いたが、結果として住民側の提訴から10年が経過しても審査は終わらず、訴訟は長期化した。
 「審理の継続は、原告らに被告の主張立証に延々と対応することを余儀なくするもの。正当化は難しい」。谷口哲也裁判長は判決の中で、北海道電が敷地内断層に関する主張を書面で提出する意向を示していたにもかかわらず、今年1月に審理を打ち切り判決を出した理由をこう説明した。
 地裁は今回、科学的知見や資料を持つ電力会社側が立証責任を尽くさない場合「安全性を欠く」とする過去の原発関連訴訟で示された判断枠組みを適用した。
 泊原発の既存の防潮堤がある地盤で液状化が起きる可能性は低いとする北海道電の主張には「資料による裏付けをしていない」とし、建設予定の新しい防潮堤も「高さ以外の構造が決まっていない」と指摘。規制委の設置許可基準を満たしていないと結論づけた。
 その上で、ほかに争点となっていた海底活断層や敷地内の活断層の有無については判断することなく、不十分な津波対策のみで安全性に問題があるとした。
 保管中の使用済み核燃料の安全性に関しても、「北海道電は具体的な検討に基づいた根拠を何ら示していない」と厳しく指弾。一方で、適切な撤去場所を特定していないことなどを理由に、原告側の撤去請求自体は退けた。
 北海道電は判決後、「最新の知見を踏まえながら、科学的・技術的観点から説明を重ねてきた。当社の主張を理解してもらえず誠に遺憾であり、到底承服できない」とするコメントを出し、速やかに控訴する方針を示した。
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