[2018_09_07_04]社説 <北海道地震>全道停電 集中は、もろく危うい(東京新聞2018年9月7日)
 
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社説 <北海道地震>全道停電 集中は、もろく危うい

 苫東厚真発電所の機能不全に始まる停電の闇が、広い北海道を覆い尽くした。電源の一極集中、過度な依存は、地震に弱い。バックアップと調整機能の強化が急がれる。大都市圏でも、なおのこと。
 一発電所のダウンが全道を覆い尽くした。復旧は始まっているものの、一時は全二百九十五万戸が光を失った。阪神大震災時を上回る。交通機関をはじめ、あらゆるインフラが機能不全に陥った。
 震源地に近い苫東厚真は、道内最大の火力発電所。三基の最大出力は合計百六十五万キロワットに及ぶ。
 北海道電力は、五十六の水力発電所と十二の火力発電所、そして泊原発を保有する。最大とはいえ、すべての需要を苫東厚真で賄っているわけではない。では、なぜ停電が全道に及んでしまうのか。
 電力は張り巡らされた送電網で家庭や工場に運ばれる。
 例えば大規模発電所が停止して、送電網を流れる電気が足りなくなると、それを補うために、他の発電機が“過稼働”の状態になり、ついには空回りを起こして壊れてしまう恐れがある。なので停止させざるを得なくなる。それがドミノ倒しのように連なっていく。
 北海道大停電の教訓は、電源の一極集中は危険である−、ということだろう。
 大規模発電所への過度な依存を改め、再生可能エネルギーの活用を視野に発電所の配置を見直し、本州も含めた連携網、つまり需給調整の機能の強化が急務である。現に北海道電は本州からの融通で急場をしのぐという。
 かといって、原発には安易に頼るべきではない。
 苫東厚真の1号機、2号機の配管が損傷し、蒸気が漏れ出した。4号機では、タービンから出火した。地震の揺れによる損壊は、原発でも十分起こり得る。
 原発事故の影響が火力発電所の比ではないことは、3・11で明らかだ。今回の地震でも泊原発の外部電源は、震度2で喪失した。
 電力がインフラの中のインフラであることを、今度の地震であらためて思い知らされた。
 医療機関への影響は特に深刻だ。これが、命にかかわる八月の猛暑のさなか、道外で起きていたらと思うと一層背筋が寒い。
 大都市ほど停電には弱い。電源の分散配置、連携強化が急がれるのは北海道だけではない。

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