三陸はるか沖地震の何倍
も大きい地震の可能性も ▼昨年暮の三陸はるか沖地震その後の 余震についてどうお考えですか? 核燃料サイクル各施設の敷地の東方の海域は、「地震の巣」として有名なところです。青森県東方沖から北海道日高沖へかけての海底には大小の活断層が存在します。マグニチュード(M)=8・0内外の巨大地震が、ほぼ100年プラス・マイナス10年周期で起こっている他、M=7クラスの大地震も、たびたび起こっています。27年ほど前に1968年十勝沖地震(M=7・9)が起こったので、来世紀中頃にこのクラスの巨大地震が起こると予想されていました。 昨年暮の三陸はるか沖地震は、地震波として出されたエネルギーの大きさでは、1968年十勝沖地震の4分の1程度のM=7・5というものでした。(Mが0・2小さいと、エネルギーは半分になります。)ですから震央位置の如何によっては将来、敷地またはその付近が、三陸はるか沖地震の何倍もの大きさの地震に襲われるおそれもあることになります。 ちなみに、三陸はるか沖地震では、青森県に二人の死者が出ましたが、1968年十勝沖地震の死者は、青森県47人、その他5人の合計52人に達しました。 敷地のすぐ東方の海底大活 断層を施設建設には支障の ないものとした安全審査 ▼その青森東方沖から北海道日高沖にか けての海底活断層については、核燃料 サイクル各施投の安全率査では、どの ような評価がなされたのでしょうか? この海域に多くの海底活断層があることは、以前から知られています。とくに各施設の敷地のすぐ東方の海底に、少なくとも84kmの長さの大活断層がほぼ南北に走っていることが知られています。ところが安全審査ではその海底大活断層は施設の建設に支障のあるものではないことにされてしまいました。 過去敷地に最大の 影響を与えた地震 は安全審査対象外 ▼それでは、核燃料サイクル各施設の中 でも最も危険な再処理施設の安全審査 では、どの程度の規墳の地震が起こる 可能性を考えて審査がなされたのでし ょうか? 設計用最強地震、および設計用限界地震という2種類の地震を想定して審査されました。前者は、過去の地震および近い将来敷地に影響を与えるおそれのある活動度の高い活断層による地震から選ばれるものです。再処理施設については、1902年の三戸地方の地震(M=7・0)・1931年の青森県南東方の地震(M=7・6)および1978年の青森県東岸の地震(M=5・8)の三つが選ばれました。 しかし、過去に敷地またはその近傍に最大の影響をあたえた地震は1968年十勝沖地震であるのに、安全審査では、これを設計用最強地震とは認めていません。 また後者は、地震学的見地に立脚し、前者を上回る地震およひ直下地震について、敷地に最も大きい影響を与えることが考えられるものが選ばれるものです。再処理施設については、M=8.25(震央距離50km、探さ60km)のプレート境界付近の地震およぴM=6・5(震源距離10km)の直下地震が想定されました。 しかし、施設の直下に探さ0qの大地震が起こった時のことなどは想定されていません。いずれにしても、起こることが予想される地震の影響について、安全審査は非常に甘い見方をしています 。 活断層の可能性の高い 再処理工場直下の断層 ▼1988年に地元紙に「再処理工場施設直下に断層、原燃内部資料で判明」という記事が載りましたが、その断層についてどうお考えでしょうか? 安全審査でも、直下に二つの大きな断層かあることは認めていますが、少なくとも第四紀後期の活動は認められないので、再処理施設の建設に支障のある活断層ではないとされています。しかし、その根拠は極めて薄弱です。内部資料も「今の状況証拠だけでは第三者から活断層といわれたら十分説明できない。」「将来裁判になった時などに、このままの証拠で活断層でないとはいいきれない。」と弱気の見解を述べています。活断層の可能性は大きいと言わざるをえません。 変位、変形が大規模に 生じた場合いかなる耐 震設計も無意味となる ▼核燃核施設の地盤はどのようなものな のでしょうか?もし液状化などで施設 が倒壊したら大事故につながると心配 ですが。 表層地盤の盛土などは地震時に液状化のおそれがありますが、基礎地盤は、鷹架層と呼ばれる新第三紀中新世の地層なので、液状化の心配はありません。 しかし、地震に際して、基礎地盤に隆起、沈降、陥没、地割れや、地質断層の出現による水平方向、あるいは垂直方向のずれなどの変位、変形が大規模に生じた場合には、いかなる耐震設計も無意味になり.施設が大きな損壊をこうむるおそれが多分にあると言えます。 大事故を起こせば 滅亡のもとになる ▼最後に政府や青森県におっしゃりたい ことがありましたらお聞かせください。 「繁栄は滅亡のもと」と言いますが、原子力施設の建設によって、かりに一時的に繁栄するようなことがあっても、それが大事故を起こせば、滅亡のもとになります。核燃料サイクルの建設は、日本地図から青森県が消える原因にもなりかねないので、一刻も早くこれを撤去すべきだと思います。 ▼お忙しいところ、ありがとうございま した。 (注・このインタビューは阪神大震災が起こる前に行なわれたものです。) 生越氏紹介 生越忠(おこせすなお) 1923年生まれ。東京大学理学部卒業。東京大学助手などを経て、1988年まで和光大教授。川内原発、柏崎原発、女川原発、能登原発、もんじゅ等、原発の地質問題を数多く手がける。 「悪用される科学」(31書房) 「検証・危険列島J(日本文芸祉) など著書多数。 ◆青森県六ヶ所村にはウラン濃縮工場、低レベル放射性 廃棄物貯蔵センターが操業中、再処理工場の建設は進 行中です。高レベル放射性廃棄物貯蔵施設には、海外 に使用済み較燃料の再処理を寄託したことにともない 返還される、高レベル放射性廃棄物ガラス固化体、の フランスからの搬入計画実施が目前に迫っています。 ◆核燃施設、たとえば再処理工場の事故は重大です。旧 西独政府が1975年にケルンの原子炉安全研究所に研究 を依頼し、翌年に報告された再処理工場(六ヶ所村の 1.75倍規模)の大事故影響評価の数値を同国の環境保 護団体が当時の人口分布に当てはめたところ、最大級 事故の場合、風向きによっては死者は3千万人にもなる というものてした。 |
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