[2020_05_15_04]曲折の6年 再処理「合格」 (2)トラブル 安全意識に「甘さ」 原燃、改善活動道半ば(東奥日報2020年5月15日)
 
 「安全対策の大前提となる設備の保守管理すらできていない」「日本原燃に再処理事業をやらせて良いのか」−。
 2017年9月13日、都内で行われた審査会合。原子力規制庁の担当者は辛辣な言葉を原燃に浴びせた。
 原燃は審議の前に、再処理工場の建屋に800リットルの雨水が流入したトラブルについて報告した。焦点のずれた説明に規制庁の担当者はいらだちを隠さず「なぜ繕った説明をするのか」と声を荒らげた。
 審議と改善活動は並行して進めたい−。審査を継続してほしいと食い下がる原燃に、原子力規制委員会の田中知委員も「現場の安全確保を最優先にした上で審査対応をするのが筋」とぴしゃり。1カ月後の委員会では「安全確保上の問題が改善できないなら、規制委として、しかるべき対応を取る」とまで踏み込んだ。
 その年、原燃の施設ではトテブルや保守管理上の不備が続発した。雨水流入間題では、原因となった箇所が14年間にわたって一度も点検されていなかったことが発覚した。ウラン濃縮工場では複数のダクトの腐食・損傷が見つかった。
 前年には、事実と異なる社内報告書が不適切なプロセスで作成されていたことが規制庁の検査で明るみに出ていた。14年の安全審査申請時、「世界一安全な施設をつくる」と声高に訴えた原燃に内実が伴っていなかったことが露呈した。
 事業の根幹であるはずの安全に対する意識や組織の風土に何度も疑問符を付けられ、「失格」の土俵際まで追い込まれた原燃。「あり得ないトラブルが多すぎる」。身内であるはずの電力会社からも批判が上がった。工藤健二社長(当時)は17年10月、自ら委員会に出席し審査の中断を申し出た。
 およそ半年に及ぶ中断期間で、原燃は60万以上とされる再処理工場の設備・機器を全て点検、品質保証活動も見直した。工藤氏は翌年4月、「改めて設備の状態に気付き、意識変化がもたらされた」と切々と訴え、審査が再開された。
 ただ今も改善活動は途上だ。19年8月に起きた工場の排風機放障では、未然に原因に気付く機会が複数回あったにもかかわらず、見逃してしまったことが大きな要因に挙げられた。
 工藤氏の後任として同年1月に社長に就任した増田尚宏氏は「恥ずかしいトラブル」と陳謝。一方、今年4月の会見で、この1年を振り返って「日常的に品質保証活動ができる企業集団になったと思う。作業や改善活動がどうあるべきか、社員が頭の中でイメージできるようになった」と強調した。
 原燃は変わったのか。六ヶ所村職員時代、01年に発生した使用済み燃料受け入れ・貯蔵施設のプール水漏えい問題に関わった寺下和光村議によると、当時は電力会社からの出向が多く「メーカー任せ」「下請け任せ」の風潮があったという。「今はプロパー社員が増え、一人一人の施設に対する意識も向上したと思う」とし、「安全に関わる技術伝承に力を尽くしてほしい」と注文を付けた。
 規制委の更田豊志委員長も「トラブルはありませんというのは一種の神話」とするものの、根本原因が安全意識の低さや怠慢だとするなら、立地に協力している地元への裏切りとなりかねない。規制庁幹部は言う。「企業体質にまだ甘さがある。今後も日々の活動を確認していく」 (加藤景子)
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