[2011_12_22_01]3.11大震災 フクシマの教訓 「濃縮工場 浸水の恐れ」 千年で5回、半島に大津波 第5部 県内施設 安全性を問う6(東奥日報2011年12月22日)
 「六ヶ所再処理工場は標高55メートル。津波の影響はないと考えている」。今年10月、日本原燃の川井吉彦社長は青森市内で本紙取材にこう答えた。再処理工場を巨大津波が襲う恐れはないかーとの質問に答えたものだ。
 本当にそうなのか−。北海道や下北半島の津波の痕跡調査に取り組んできた北海道大学の平川ー臣特任教授(地形学)は「津波に襲われるかどうか、再処理工場は地形から見て問題ない」と日本原燃の主張に同調しつつ、こう付け加えることも忘れなかった。「ただ、ウラン濃縮工場は危ない」
 平川教授によると、同工場の東側は海岸から緩やかな斜面が続き、そこから工場敷地まで延びる数本の谷が「津波を導くような地形」になっているという。日本原燃によると同工場の敷地は標高36メートル。東日本大震災では、岩手県宮古市田老地区などで、津波遡上(そじょう)の高さが40メートル近くに達したことが分かっている。
 平川教授は「田老地区では谷を満たすように海水がはい上がり、想像を絶する高さまで浸水した。同じように六ヶ所沖に巨大津波が襲来すれば、(ウラン濃縮)工場まで達する可能性はある」と指摘する。

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 3月11日の大地震による巨大津波。テレビでは、東京電力福島第1原発を襲う巨大な白波の映像が何度も流れた。事故を受け、国や事業者は津波の想定の見直しを急ぐ。日本原燃は、非常用電源設備の増設や電源車配備などを打ち出したが、これらは再処理工場が対象だ。
 一方、東通原発を運営する東北電力は10月、震災前に行った敷地内の調査で、海から運ばれて堆積した可能性がある砂の層が標高8メートル付近まで分布していたーと発表した。津波の痕跡かどうかは不明というが、東北電力は「想定津波高の8・8メートル以下。敷地も標高13メートルで原発の安全性には余裕がある」とする。
 平川教授の調査でも、過去に巨大津波が下北半島を襲ったことが分かっている。しかも約千年の間に、少なくとも5回の津波の痕跡があったという。
 平川教授は今夏、東通原発そばの小田野沢地区で津波の堆積物を調べた。標高約5メートル、海岸から約1・3キロまでの内陸の数地点で、朝鮮半島・白頭山噴火(947年)の火山灰の上に、海の砂、石などの堆積物が5層確認された。
 「ここまで入るのは相当大きな津波。堆積物から、どこで起こり、どんな地震だったか復元できるだろう」と平川教授。津波を起こした地震については、明治三陸地震(1896年)や17世紀初頭の地震を想定している。

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 東北電力は、平川教授のこの学説についても確認。東通原発の志賀衛副所長は「これまでの調査結果と整合する内容だと認識している」と述べた。
 ただ、平川教授は「8メートルより高いところまで津波が上った可能性がある。ボーリング調査だけで、津波が運んだ砂などの痕跡がないからといって、津波が来なかったことにはならない」と追加調査の必要性を強調する。
 東北電力は現在、東通原発の耐震安全性評価(バックチェック)の作業中だ。震災で得られた知見を反映し、マグニチュード(M)9・03の連動型地震を想定して、津波や地震動が原発に与える影響を評価する。
 志賀副所長は「少なくとも(津波の想定は)8・8メートルは超えるだろう。想定が15メートルを超えるようであれば、(防潮堤の)さらなるかさ上げなど対策を検討しなくてはならない」と話している。
   (加藤景子)
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