[2020_12_09_01]六ヶ所村 核燃料工場 合格示す審査書取りまとめ 原子力規制委(NHK2020年12月9日)
 
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六ヶ所村 核燃料工場 合格示す審査書取りまとめ 原子力規制委

 使用済み核燃料から取り出したプルトニウムを使って新しい燃料を作る国内初の商業用の核燃料工場について、原子力規制委員会は規制基準の審査に合格したことを示す審査書を取りまとめました。
 日本原燃が青森県六ヶ所村に建設中の核燃料工場は、原子力発電所の使用済み核燃料から取り出したプルトニウムを使ってMOX燃料と呼ばれる核燃料を作る国内初の商業用の工場です。
 核燃料を再利用する国の核燃料サイクル政策の重要な施設の1つで、原子力規制委員会はことし10月、新しい規制基準の審査に事実上、合格したことを示す審査書案を取りまとめていました。
 そして9日の会合では、一般からの意見で、地震などにより放射性物質の漏えいが起きるのではないかなどの声があったことが報告されました。
 これについて規制委員会は事業者の対策で安全性は保たれるなどとし規制基準の審査に合格したことを示す審査書を正式に取りまとめました。
 総事業費は2兆円余りで、日本原燃は再来年度上期の完成を目指しています。
 核燃料サイクル政策をめぐってはことし7月、使用済み核燃料からプルトニウムを取り出す再処理工場も審査に合格し、政策の主要な施設で規制側の手続きが進んでいます。
 ただ、いずれの施設も完成が大幅に遅れ、巨額の費用がかかっているほか、プルトニウムの利用も当初の計画どおりには進んでおらず、政策は課題を抱えています。

原子力規制委 更田委員長「工事は一層注意深く」

 プルトニウムを使う核燃料工場が新しい規制基準に適合しているとして審査に合格したことを示す審査書を、原子力規制委員会が9日取りまとめたことについて、更田豊志委員長は「建設に長い期間がかかっているので、今後の工事にあたっては一層注意深く進めてほしい。また、隣接する使用済み核燃料の再処理工場と一体的に運用する施設で粉末状になったプルトニウムを扱うので、安全性やセキュリティを高めるため、速やかに核燃料に加工できるような運用をすることが必要だ」と述べました。

核燃料工場の審査とは

 原子力規制委員会の審査に合格した核燃料工場は、使用済み核燃料の再処理工場に隣接し、使用済み核燃料から取り出したプルトニウムを使って「MOX燃料」と呼ばれる特殊な燃料を製造します。
 プルトニウムはウランと混ぜられ、固められることで燃料になるため、工場では粉末状になった放射性物質を取り扱うのが特徴です。

地震と津波の想定

 審査では、地震や津波など自然災害への対策については、同じ敷地にある再処理工場と想定をそろえる形で、事故への対策が妥当かどうか、およそ6年にわたって審査が行われてきました。
 地震の揺れの想定については、敷地の北東を通る「出戸西方断層」という活断層の評価を踏まえて、450ガルから最終的に700ガルに引き上げました。
 津波についても22メートルと評価し、敷地が55メートルの高台にあるため、再処理工場と同じく津波は到達しないと評価しました。

粉末状の放射性物質の対策

 また、放射性物質の粉末を取り扱う工場ならではの対策も重点的に審議されました。
 工場では、放射性物質が漏れないようグローブボックスと呼ばれる密封された箱の中で核燃料を作る必要があり、日本原燃は耐震性を向上させる対策を示し、規制委員会は妥当と評価しました。
 また、グローブボックスの中では機械による遠隔操作で放射性物質を扱うため、電気ケーブルが切れるなどして機械の潤滑油から火が出る火災が想定されました。
 日本原燃は複数の消火設備を配備するとしたほか、火災の際は放射性物質が工場の外に漏れ出ることがないよう空気の通るダクトを閉じるといった対策を示し、規制委員会はこれを妥当と評価しました。
 このほか、放射性物質を大量に混ぜるなどして核分裂反応が連続して起こる「臨界」と呼ばれる事故についても審査されました。
 規制委員会は、仮に数十回にわたり操作を誤ったとしても臨界は起きず、事故を防ぐ対策はとられているとして妥当と評価しました。

核燃料の生産見通し不透明

 操業に必要な原子力規制委員会の審査に合格した核燃料工場ですが、燃料の生産の見通しは不透明です。
 核燃料工場は核燃料を有効利用する目的で原発の使用済み核燃料から取り出したプルトニウムを使って「MOX燃料」という特殊な核燃料をつくります。
 電力各社が福島の原発事故前に示した計画では、この「MOX燃料」を2015年度までに16基から18基の原発で利用するとしていました。
 ところが、原発事故のあと、規制基準が厳しく見直され現在、利用しているのは、福井県にある高浜原発3号機と4号機、愛媛県にある伊方原発3号機、佐賀県にある玄海原発3号機の4基にとどまっています。
 電力各社は利用する原発の数を順次、増やしたいとしていますが、具体的な時期は示されていません。
 もう1つの課題もあります。
 日本は去年末の時点でプルトニウムをおよそ46トンを保有し、このうち80%がイギリスとフランスで保管されています。
 海外でもこの2か国のプルトニウムを使って「MOX燃料」をつくる契約を海外事業者と結んでいます。
 このため、青森県六ヶ所村に建設中の燃料工場での生産を急ぐ必要はないのが現状です。
 事業者の日本原燃は2022年度上期の完成を目指していますが、具体的な生産については不透明な状況が続いています。
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