[2016_07_22_02]除染土は廃棄物、処理責任は東電にある! 道路を「処分場」にする環境省の愚策 熊本一規(明治学院大学教授)(「週刊金曜日」1097号2016年7月22日)
 
除染土は廃棄物、処理責任は東電にある! 道路を「処分場」にする環境省の愚策 熊本一規(明治学院大学教授)

 環境省が福島原発事故後の除染に伴う「8000ベクレル/kg以下の除染土」を全国の公共事業に利用しようとしている。放射線物質汚染対処特措法(以下「特措法」)では、除染土はフレキシブルコンテナ(略称「フレコン」)等に詰めて仮置き場で保管した後、中間貯蔵施設に運び込む計画になっているが、中間貯蔵施設の建設が進まないため、公共事業に利用しようというのである。

 全国に放射能を拡散
 原発の運転に伴う放射性廃棄物は、100ベクレル/kg超を基準として六ヶ所低レベル放射性廃棄物埋設センターに運搬され、埋設されてきたが、福島原発事故に伴い、環境省は基準を8000ベクレル/kgに緩めて基準以下のものは通常の廃棄物として扱うようにし、「100ベクレル/kgは再利用の基準、8000ベクレル/kgは処理の基準」と説明してきた。にもかかわらず、今度は、除染土の再利用に8000ベクレル/kgを適用しようとしているのだから、従来の説明と矛盾することは明らかである。 (中略)
 資源と廃棄物とは、基本的に有償か逆有償かで区別される。環境省は「土壌は、本来貴重な資源であるが、除去土壌等はそのままでは再生利用が難しい」ため「再生利用先の創出のためにインセンティブが不可欠」としている。
 インセンティブが金銭になるか制度になるかは未定であるが、制度の創設・維持にも費用がかかるから、いずれにしろインセンティブを付けることは逆有償と同じである。したがって除染土は廃棄物であり、その処理責任は汚染物質を排出した東電にある。特措法も「除却土壌の処理は東電が行なう」旨規定しているから、除染土を処理すべき廃棄物として捉え、処理責任を東電に負わせている。
 ところが、特措法は、同法における廃棄物の定義から「土壌を除く」として定義上、除染土を廃棄物から除いている。除染土を廃棄物として処理する仕組みを定めているにもかかわらず、再利用を図るため定義上は「資源」としているのである。 (中略)
 廃棄物として処分すべき除染土を再利用に回すことは、環境汚染の点からも好ましくないだけでなく、東電の処理責任を免責することにもつながる恐れがある。東電に処理責任がある廃棄物をインセンティブを付けて再利用に回すのであるから、インセンティブの費用は東電が負担すべきであるが、その可能性は低いからである。インセンティブの費用に税金が注がれれば、負担を東電から国民に転嫁することになる。

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