[2020_08_26_04]「北海道寿都を呼び水に」の思惑 梶山経産相、不安払拭に躍起 核ごみ発言(北海道新聞2020年8月26日)
 
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「北海道寿都を呼び水に」の思惑 梶山経産相、不安払拭に躍起 核ごみ発言

 原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定について、国は全国の複数の市町村が文献調査に応募した中から絞り込むことを目指している。後志管内寿都町が文献調査への応募を検討していることを巡り、梶山弘志経済産業相が25日の閣議後会見で知事の同意なく先の調査に進まないことを断言したのは、地域住民らの不安を払拭(ふっ しょく)する狙い。寿都町の調査への応募断念を回避し、「モデル地区」として呼び水にしたい考えだ。
 「『トイレのないマンション』という状況をどうにかして解消したい。これは原発の電力を享受してきた世代の大きな責任だ」。梶山氏は会見で、処分場がないまま原発を使うことを批判する例えを引いて、核のごみ問題が国民的課題であることを訴えた。
 核のごみを最終処分するため、国は2000年に関連法を作り、候補地の公募を始めた。07年に高知県東洋町が応募したが、住民らの反発を受けて撤回。以来、新たな応募はなかった。
 その間、核のごみは増え続けている。原発の使用済み核燃料は今年3月末時点で全国の原発の貯蔵プール容量全体の75%に達し、限界は近づきつつある。一部を英仏に運び、再処理工場でいわゆる核のごみの「ガラス固化体」を製造。3月末時点で約2500本が国内に戻り、青森県六ケ所村などで一時保管している。
 処分場選定を進めるため、経産省が寿都町を東洋町の二の舞いにしたくない思いは強い。文献調査と同時に進める地域の対話活動で住民の意識がどう変化するか探るなど、「実験場」としての役割にも期待する。
 ただ、知事だけではなく周辺町村長らも強く反発し、早くも道内で分断が生じている。梶山氏は会見で、反対派の理解を得るため経産省職員を派遣し説明させる考えを示したが、あくまで要望があればという立場。「国が寿都町を狙い撃ちにしていると思われたくない」(経産省幹部)と静観している。
 こうした状況について、原子力政策に詳しい福島大の清水修二名誉教授(財政学)は「現状では手を挙げた自治体が袋だたきに遭い、地域が分断され、応募を取り下げてもしこりだけが残ることになる。それを避けるために国は、他の自治体にも申し入れ、複数同時に文献調査をして、応募自治体が孤立しないようにするべきだ」としている。(上野香織)
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