[1999_11_07_01]社説 活断層避けた街づくりを(東奥日報1999年11月7日)
 
 六ヶ所村の核燃料サイクル施設のうち、ウラン濃縮工場、低レベル放射性廃棄物貯蔵センターは既に操業し、再処理工場の建設が進んでいる。
 再処理工場を例にとると、着工に至るまで事業者の国への事業許加申請、国の第一次安全審査、原子力安全委員会による第二次安全審査など、安全性に対する手統きを踏んだ。
 この一環として平成三年10月、六ヶ所村で再処理工場と海外返還高レベル放射性廃棄物貯蔵施設に関する原子力安全委の公開ヒアリングが開かれた。
 核燃に対するいろんな立場の人たちが数多くの意見を述べたが、大地震が起きた場合の核燃施設の耐震性を問う声もあった。
 再処理工場は、地下深く安定した岩盤まで基礎を掘り下げ、国も原子力安全委も耐震性に問題なし、との見解だった。
 ただ、気になるのは大地震を引き起こす活断層である。
 日本列島は″地震の巣″といわれる。地球表面は十数の岩石圏(プレート)で覆われ、日本の太平洋側海底では、フィリピン海プレー卜と、太平洋プレートがせめぎ合っている。
 日本列島はプレートが押し合うことによってできた″地球表面のしわ≠ニいえる。
 遺跡の発掘などで、地下の地盤に食い違いが見られることがある。なにかでスパッと切ったように地層がずれている。断層である。
 ごく最近まで活動したり、今後活動する可能性がある断層が活断層だ。岩盤のズレは大地震を引き起こす。
 1988年12月、25000人を超す犠牲者を出したアルメニア大地震、1989年10月、米国サンフランシスコを襲ったロマプリエタ地震、90年6月にイラン北西部・カスピ海西岸地域を襲った大地震など活断層が動いた大地震だ。
 95年1月17日、大都市神戸を襲った阪神淡路大震災は忘れられない。ことし8月17日のトルコ北西部大地震、9月21日の台湾大地窮も括断層による。
 日本では、活断層がどこにあるのか。東京大学出版会刊の「日本の活断層」、通産省工業技術院地質調査所作成の「50万分の一活構造図」、国土地理院の「都市圏活断層図」など参考になるだろう。内陸地震空白域とされる十和田湖周辺はどうか。本県も含めて活断層の完全な調査が行われたとはいい難い。
 阪神淡路大震災では、淡路島の野烏断層が長さ約10キロにわたり地表に姿を現し、地盤が水平に最大2メートルずれた。
 狭い国土に一億ニ千万人が住むニッポン。大地震が起こりうる活断層上に都市を造ったのが不幸といえなくもない。人がだれもいない野原で地割れが起きても、人的社会的被害はないからだ。
 世界第一級の活断層・サンアンドレアス断層がある米国カリフォルニア州は、71年にロサンゼルス近くで起きたサンフェルナンド地震被害を教訓に州政府が翌72年「活断層法」を制定した。同法によって活断層の両側50フィート{約15メートル)以内では、原則として人間が居住する建物の新築を禁止した。法制定前に州内に約500あるという活断層を調査、活断層図を作った。
 日本には約二千の活断層があるとされ、もちろん県内にもある。国内の多くの中枢都市、中核部市近くに活断層が走り、万が一、ずれれば大被害が予想される。
 活断層がどこを走っているかといったキメ細かな情報を公開し、活断層上での学校、病院、ガソリンスタンドなどの建設規制、高速道整備など規制する法を制定、大地震の被害を未然に避ける安全な街づくりを進めてほしい。
KEY_WORD:ROK_KIROKU_:HANSHIN_:LOMAPRIETA_:ROKKA_:ROK_URAN_:ROK_LOW_:ROK_HIGH_:TORUKO_:TAIWAN_:SANFERNANDO_:火山_: