[2023_09_16_04]高浜2号機が再稼働 老朽化、使用済み核燃料の問題で行き詰まる原発 福島事故以来12基目、すべて西日本(東京新聞2023年9月16日)
 
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高浜2号機が再稼働 老朽化、使用済み核燃料の問題で行き詰まる原発 福島事故以来12基目、すべて西日本

 06時00分
 関西電力は15日に高浜原発2号機(福井県)を約12年ぶりに再稼働させ、国内最多となる全7基の運転体制に入った。しかし、保有する原発は老朽化し、使用済み核燃料の搬出先は決まらない。東京電力福島第1原発事故後、原発推進の先頭に立つも、先送りできない課題が山積し、国策の行き詰まりを露呈している。(渡辺聖子)

 ◆地元福井県との「約束」

 午後3時、高浜2号機が原子炉を起動した。実はこれを含め運転開始から40年を超える高浜1号機、美浜原発3号機は、立地自治体の福井県との約束を果たさなければ、運転を続けることができない状況にある。
 1990年代から懸案となっている使用済み核燃料の県外の搬出先が、決まらないためだ。関電は県との約束で、搬出先となる中間貯蔵施設の県外候補地を2023年末までに確定させなければ、3基を停止するとしている。
 福井県内にある高浜、大飯、美浜の3原発で保管する使用済み核燃料は6月末時点で、保管するプールの貯蔵容量の83%に達している。稼働を続ければ5〜7年で満杯に。核燃料の交換ができなくなり、原発そのものを動かせなくなる。

 ◆ごく一部の搬出計画と、中間貯蔵施設構想があるだけ

 関電は6月、高浜原発のプールに保管する約200トンを、フランスでの実証研究のため2020年代後半に搬出する計画を県に報告した。「約束を果たした」と説明し、国も「県外搬出と同等の意義がある」との認識を示した。
 ただ、搬出量は3原発の保管量のわずか5%。地元は「確定とすることに違和感がある」などと反発し、実現が見通せない使用済み核燃料を再利用する「核燃料サイクル」への不信も根深い。約束の期限まで4カ月を切ったが、県は判断を示していない。
 8月には、山口県上関町で中国電力と共同で、中間貯蔵施設をつくる計画を表明。中国電が原発建設を予定する敷地内で、町は施設建設に向けた調査開始については容認した。
 ただ、建設が実現したとしても、中国電の長谷川千晃・島根原子力本部長は9月7日の島根県議会で「仮に造れば十数年はかかる」と答弁。すぐに福井県外の搬出先を確保はできない。

 ◆日本では未経験の60年超え運転が視野に

 福島事故後、再稼働をリードした関電だが、19年に原発が立地する高浜町の元助役(故人)から役員らが多額の金品を受け取っていた問題が発覚。未曽有の不祥事が経営を揺るがした。
 それは、原発のリプレース(建て替え)の議論にも影響している。美浜原発では廃炉中の1号機に代わる建て替え計画があり、10年11月には自主調査を開始。11年3月の福島事故後に調査は止まり、広報担当者は「中断中の状態」と話す。
 原発の最大限の活用を掲げた岸田政権は、封印してきた新増設と建て替えを可能とする方針に転換。関電はその1番手と目されているが、1兆円超かかるとされる原発の建設に手を挙げられる状況にない。
 原発の老朽化による対策コストも追い打ちをかける。10年後には7基全てが運転開始から40年を超え、高浜1、2号機や美浜3号機は日本では未経験の60年超え運転が視野に入る。

 核燃料サイクル

 原発の使用済み核燃料を化学処理(再処理)して、プルトニウムやウランを取り出し、混合酸化物(MOX)燃料に加工して、原発で再利用する仕組み。政府が原子力政策の柱としているが、国内では日本原燃の再処理工場(青森県六ケ所村)が完成延期を繰り返しており、実現の見通しはない。MOX燃料を使うプルサーマル発電ができるのも、現状は関西電力高浜原発3、4号機など4基にとどまる。

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 ◆全国の原発の現状は? 老朽原発が稼働中

 関西電力が15日に高浜原発2号機(福井県)を再稼働し、全7基を運転する体制に入った。東京電力福島第1原発事故後の新規制基準下で再稼働した原発は全国で計12基となり、全てが西日本に立地している。
 関電の7基のうち、運転開始から40年を超えるのは、国内で最も古い高浜原発1号機と、次いで古い2号機、40年超運転の第1号となった美浜原発3号機。他の4基も運転開始から既に30年を超えている。
 原子力規制委員会の審査で新基準に適合したが、再稼働をしていないのは5基ある。中国電力は今月、島根2号機(島根県)を2024年8月に再稼働すると発表。東北電力は同2月に女川原発2号機(宮城県)の再稼働を目指している。この2基は、立地自治体が再稼働に同意もした。
 福島で事故を起こした東京電力の柏崎刈羽原発(新潟県)は6、7号機が新基準に適合したが、テロ対策の不備が相次いで発覚し、規制委による事実上の運転禁止命令が続く。さらに規制委は今月、東電に原発を運転する事業者としての適格性があるかどうかを判断する議論を始めたばかり。東電がもくろんだ年内の運転再開は不可能となった。
 首都圏に立地する日本原子力発電の東海第2原発(茨城県)は、再稼働に向けた地元同意の手続きが進んでいない。
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