[2023_07_28_04]高浜原発1号機 12年ぶり再稼働 原則40年の運転期間制限超2例目 (NHK2023年7月28日)
 
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高浜原発1号機 12年ぶり再稼働 原則40年の運転期間制限超2例目

 運転開始から来年で50年となり、現在国内の原発でもっとも古い福井県の関西電力・高浜原子力発電所1号機が、28日午後3時に原子炉を起動し、12年ぶりに再稼働しました。福島第一原発の事故のあと原則40年に制限されている運転期間を超えて再稼働するのは全国で2例目です。
 福井県高浜町にある高浜原発1号機は、1974年に運転を開始した廃炉になっていない中では国内で最も古い原発で、2016年に新しい規制基準の審査に合格し原則40年の運転期間の延長も認められましたが、テロ対策の施設が未完成で再稼働できていませんでした。
 この施設が7月完成し、国の検査などが終わったことから、28日再稼働することになり、高浜原発1号機の中央制御室では午後3時に関西電力の運転員がパネルを操作して核分裂反応を抑える制御棒を抜いて、原子炉を起動しました。
 高浜原発1号機の再稼働は2011年1月に定期検査で停止して以来、12年6か月ぶりで、東京電力福島第一原発の事故のあと原則40年に制限されている運転期間を超えて再稼働するのは、同じく福井県にある美浜原発3号機に次いで全国で2例目です。
 関西電力によりますと、作業が順調に進めば29日朝には、原子炉で核分裂反応が連続する臨界状態に達し、8月2日には発電と送電を開始する見通しだということです。

 関西電力 森社長「安全最優先で緊張感持って作業」

 高浜原子力発電所1号機の再稼働について、関西電力の森望社長は「東日本大震災からおよそ12年にわたり、福島第一原子力発電所事故を踏まえた新規制基準への対応や自主的な安全性向上の取り組みを進めてまいりました。高浜発電所1、2号機の本格運転再開による7基体制の実現に向け、引き続き、安全最優先で緊張感を持って作業を進めてまいります」などとするコメントを発表しました。
 また、関西電力原子力事業本部の田中剛司副事業本部長は、「高浜原発1号機は40年超のプラントでありおよそ12年ぶりの運転再開のため、トラブル防止の観点から総点検を実施し、慎重に作業を進めている。引き続き、安全最優先で緊張感を持って作業していく」と話していました。

 高浜町 野瀬町長「安全・安心最優先に慎重かつ丁寧な運転を」

 高浜町の野瀬豊町長は、再稼働にあたってコメントを出しました。
 それによりますと「高浜発電所1号機の40年超運転は政府の掲げる2050年カーボンニュートラル、GXの実現に大きく寄与するものと考える」としています。
 そのうえで「1号機は2011年1月の定期検査入り以降、12年半の長きにわたり停止していたことで、再稼働に不安を抱く住民の方もいることから、事業者には、しっかりとした体制の下、一層きめ細やかな点検や安全対策を行い、安全・安心を最優先に慎重かつ丁寧な運転を行って頂きたい」としています。

 福井 杉本知事「引き続き厳格に監視」

 高浜原発1号機の再稼働について、杉本知事は「起動した高浜1号機は運転開始から48年が経過し、また、12年間停止していたプラントである。関西電力においては、最大限の注意を払い、これまで以上に慎重かつ安全な運転に努め、原子力に対する県民の信頼を得ていかなければならない。県としても、高浜1号機の運転について、引き続き厳格に監視していく」などとするコメントを出しました。

 高浜町の住民は

 運転開始から40年を超えた高浜原発1号機の再稼働に、立地する高浜町の住民からは安全最優先の運転を求める声や不安をのぞかせる声が聞かれました。
 60代の女性は「老朽化していると思うので1号機の再稼働は心配です。何かあった際にはすぐに運転を止めるなど安全第一で動かしてほしい」と話していました。
 かつて原発で働いた経験があるという40代男性は「以前、原発で働いていたが、古いという印象がある。万が一、何か起きた時には対応できるようにしてほしい」と話していました。
 また、60代の男性は「100%安全なものではないと思っているが、原発によって町が潤っている部分もあるのでしかたない。安全第一で運転してほしい」と話していました。

 原発関連事業に携わった業者からは歓迎の声

 高浜原子力発電所1号機の再稼働について、地元で原発に関連した事業に携わってきた業者からは歓迎する声が上がっています。
 40年以上にわたって、原発のメンテナンスなどに使う工具を販売している敦賀市の会社では、高浜原発1号機の再稼働に関連する工事用に工具の注文が、ふだんの3割から4割ほど増えたということです。
 今後も安定した売り上げが見込めるとして、期待を寄せています。
 小森英宗会長は「多くの雇用を生み出す原発に工具を納めているので、高浜原発1号機の再稼働には大変喜んでいる。今後も、しっかり安全を確認しながら原発を動かすことを支援し、地元の業者として一緒に頑張りたい」と話していました。

 反対の市民団体がデモ 再稼働中止を申し入れ

 高浜原子力発電所1号機の再稼働に合わせて、反対する市民団体がデモ行進を行い、関西電力に再稼働の中止を申し入れました。
 デモ行進は、再稼働に反対する市民団体が行ったもので、主催者側の発表で、福井県や京都府などからおよそ70人が集まりました。
 参加した人たちは、高浜原発の前で再稼働に反対を訴えるのぼり旗を掲げて「老朽原発を動かすな」などと声を上げていました。
 そして、関西電力の担当者に再稼働の中止や廃炉を求める申し入れ書を手渡しました。
 市民団体の代表を務める京都市の木原壯林さんは「高浜原発1号機は日本だけでなく世界的にもかなり古い原発で、災害の多い日本では再稼働させてはいけない」と話していました。

 福島第一原発の事故後 全国で11基目の再稼働

 関西電力の高浜原発1号機は、49年前の1974年に運転を開始した、現在国内で最も古い原発で、定期検査に入った2011年1月以来、12年6か月ぶりの再稼働となりました。
 東京電力福島第一原発の事故のあと、新たに作られた規制基準の審査に合格して再稼働したのは、おととし6月の美浜原発3号機以来、全国で11基目です。
 また、原発事故後に導入された運転期間を原則40年に制限する制度のもとで、2016年に原子力規制委員会から最長20年までの運転延長が認められていて、国内で40年を超えて運転するのは、同じく美浜原発3号機に続いて2例目となります。
 来年11月には運転開始から50年となりますが、ことし成立した最長60年の運転期間から規制委員会の審査などで停止した期間を除くとする法律により、関西電力が申請して認められれば、60年を超えて運転する初めての原発となる見通しです。
 全国ではこれまでに、鹿児島県にある川内原発1号機と2号機、佐賀県にある玄海原発3号機と4号機、愛媛県にある伊方原発3号機それに、福井県にある高浜原発3号機と4号機、大飯原発3号機と4号機、美浜原発3号機の6原発10基が再稼働していました。
 政府は、原子力の最大限の活用に向けて、これらの10基に加え、すでに規制委員会の審査に合格している7基の原発の再稼働を加速する方針を示していて、高浜原発1号機もその一つでした。

 残り6基のうち、
 ▽高浜原発2号機については関西電力がことし9月に再稼働する計画を示していて、
 ▽宮城県にある東北電力の女川原発2号機は来年2月に再稼働する計画です。

 また、島根県にある中国電力の島根原発2号機は、再稼働に必要な安全対策工事を来年5月に完了させるとしています。

 一方、
 ▽茨城県にある日本原子力発電の東海第二原発は、周辺自治体の避難計画の策定が終わっていないことなどから再稼働の時期が見通せないほか
 ▽新潟県にある東京電力の柏崎刈羽原発6、7号機は、おととしテロ対策上の重大な不備が相次いで明らかになり、規制委員会による検査が継続中で、再稼働の見通しは立っていません。

 避難計画の周知不足が課題

 原発からおおむね30キロ圏内の自治体には原発事故が起きた場合に備えて避難計画を策定することが義務づけられています。
 高浜原発の30キロ圏内では地元の福井県と隣接する京都府、滋賀県のあわせて12の市と町におよそ17万人が暮らしていて、それぞれの自治体が避難計画を策定しています。
 また、3号機と4号機の再稼働に先立つ2015年には、国と3つの県などが、広域避難計画を策定しました。
 このうち高浜町に隣接する京都府舞鶴市は、全国で唯一、都道府県をまたいで原発から5キロ圏内に500人余りの住民を抱えていて、広域避難計画では、重大な事故が起きた場合は直ちに京都市や、およそ130キロ離れた神戸市まで避難することとされています。
 また、5キロから30キロの圏内に住む福井県や京都府のおよそ16万人は、まずは屋内退避を行った上で、基準を超える放射線量が測定された場合に、避難する計画です。
 また、2020年には、高浜原発と、およそ13キロ離れた福井県おおい町にある大飯原発で同時に事故が起きるより厳しい状況を想定し、避難計画が改定されています。
 2018年には国の原子力防災訓練が行われ関係する自治体の住民など2万人が参加し、避難の手順や関係機関の対応などを確認しました。
 一方で、内閣府がこの訓練に参加した福井県や京都府、それに滋賀県の住民1600人余りを対象にアンケート調査を行ったところ、およそ4割が原発事故の際にどのように避難すればいいのか理解していないと回答し、避難計画の周知不足が課題として浮き彫りになりました。
 内閣府は、住民へのわかりやすい情報発信や、自治体と連携した避難訓練の実施、交付金を使った防災用の設備の購入などへの支援を行っていますが、再稼働の動きが広がるなかで、避難計画の実効性を高める取り組みが求められています。
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