[2023_06_21_07]福井県民を愚弄する 関電の欺瞞的な「中間貯蔵と同等」のフランスへの使用済燃料搬出計画 わずか5%の使用済燃料の搬出/「中間貯蔵と関係ない」(電事連会長)(美浜の会ニュース_NO.1822023年6月21日)
 
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福井県民を愚弄する 関電の欺瞞的な「中間貯蔵と同等」のフランスへの使用済燃料搬出計画 わずか5%の使用済燃料の搬出/「中間貯蔵と関係ない」(電事連会長)

 
 1.関電の欺瞞的な「中間貯蔵と同等」のフランスへの使用済燃料搬出計画

 関電はこれまで、使用済燃料の県外搬出に向けて、年末までに中間貯蔵の候補地を確定できなければ、老朽原発3基(美浜 3 号、高浜 1・2 号)の運転を停止すると福井県に約束していた。その期限が半年後に迫った 6 月 12 日、関電の森社長は福井県知事と面談し、使用済MOX燃料10 トン(20 体)と使用済ウラン燃料 190 トン(400 体)をフランスに搬出する計画を示した。そして、これをもって「福井県外に搬出されるという意味で、中間貯蔵と同等の意義がある」とし、中間貯蔵の計画地点を確定するという福井県との約束は果たされたと自画自賛して見せた(※1)。関電の欺瞞的な計画と傲慢な態度は、福井県、立地市町、県議会、そしてなにより福井県民を愚弄するものであり、断じて許すことはできない。既に美浜町議会等では、厳しい反対の意見が出されている。

 ※1:「この搬出の決定によって、『2023 年末を最終の期限として取り組む』としていた福井県外における中間貯蔵の計画地点の確定は達成され、2021 年 2 月に福井県知事にご報告した約束は、ひとまず果たされたと考えている。」(6/12 関電ブレス)

 (1)フランスへの搬出は、現在の福井県内使用済燃料のわずか5%

 関電が示したフランスへの搬出計画は、使用済MOX燃料 10 トンと使用済ウラン燃料 190 トンだけだ。これは、現在県内の関電原発に貯蔵されている使用済燃料のわずか5%に過ぎない。2023 年度末時点で、美浜・大飯・高浜原発の合計で 8,180 体の使用済燃料が貯蔵されている。フランスに搬出する 420 体は、その内の約5%に過ぎない。高浜 3・4 号の 40 年超え運転が認可されれば、福井県内全体で 2030 年度末には約 10,000 体の使用済燃料が原発プールに溜まることになり、420 体はその4%に過ぎず、残り 96%の方策は関電計画には何もない(4 頁)。
 関電は、「今後も必要な搬出容量を確保するため、あらゆる可能性を追求する」旨を福井県で表明しているが、具体的な方策は何も示していない。電事連会長は 16日に、実証研究のためのフランスへの搬出は、200 トン以上の計画はなにもないとも述べている。

 (2)フランスへの使用済燃料搬出と中間貯蔵とは何の関係もない

 使用済MOX燃料のフランスへの搬出は、電事連(電気事業連合会)の「使用済 MOX 燃料の再処理実証研究の計画」によるもので、中間貯蔵とは何の関係もない。2020 年代後半にフランスに搬出し、30 年代初頭にオラノ社と共に使用済MOX燃料を再処理する実証研究の一環で、高浜原発の使用済燃料を搬出するというものだ。関電社長は 6 月 12 日、「実証研究によって使用済み燃料が搬出され、(原発内の)貯蔵容量が確保できるということは、県外での中間貯蔵と同等の意義がある」と述べている。
 しかし、6 月 12 日の関電の発表の同日、電事連会長(九電社長)は記者会見を行い、関電の「県外搬出」と研究は無関係だと強調した(6/17 朝日新聞)。この言葉が、フランスへの搬出と中間貯蔵が無関係だと証明している。
 関電の今回のフランスへの搬出計画は、直接的には、むつ市の中間貯蔵施設に搬出するという計画が行き詰まったことにある。前むつ市長で現青森県知事の宮下氏は、関電の使用済燃料を受け入れるつもりはないと、知事選中も新聞社アンケートに答えている。
 本来的に使用済燃料の問題は、発生を抑えることが原則だ。原発の運転を強行して使用済燃料を生み出し続けることでは解決にはならない。中間貯蔵施設は原発の運転継続のためであり、県外でも県内の乾式貯蔵にも反対する。

 2.経産大臣の関電追認、福井県知事の不満、美浜町議会の批判

 関電の欺瞞的な計画に対して、西村経産大臣は一貫して関電計画を追認し、同じ立場にたっている。6 月 12 日の関電の発表同日、すかさず「関電が福井県にしてきた約束を実現する上で重要な意義がある」と表明した。
 福井県知事は、6 月 12 日の関電の説明に対しては「十分精査させてもらう」と述べ、国の説明を聞き、立地自治体や県議会の議論を踏まえて、最終的に判断すると述べている。そして、19 日に西村経済産業大臣と面会し、今回の関電の計画とは別に、中間貯蔵候補地を年末までに確定するよう求めた。経産大臣はこの日も「中間貯蔵と同等の意義がある、中間貯蔵施設の計画地点確定は果たされた」と無責任にも関電擁護に徹している。
 知事の上記発言は、事実上、関電の計画に不満を表明するものとなっている。しかし、老朽原発3基の運転停止には言及していない。さらに、知事の口からは、県民の声を聴くという言葉は一言もない。
 他方で、19 日の美浜町議会では、関電の説明に対して議員から厳しい批判の意見が出ている。わずか5%の搬出で、「その場しのぎの詭弁にすぎない。福井県政や県民を愚弄している」「美浜原発の使用済燃料の搬出は示されていない」「苦肉の策。理解できない」等々。また、サイト内での乾式貯蔵を求める声も出ている。

 3.40 年超えの高浜1・2号の再稼働を止めよう。審査基準違反の再稼働は許されない

 今回の関電の欺瞞的な計画の狙いは、年末までに中間貯蔵施設を確定できなければ老朽炉3基の運転を停止するという福井県との約束を反故にして、国内で最も古い高浜1号(運転開始から48 年)、高浜2号(同 47 年)を福島原発事故後、初めて再稼働させることにある。同時に美浜 3号(10 月から定検入り)の運転を継続することにある。
 関電は 6 月 21 日に高浜 1・2 号の再稼働工程を公表した。1 号は 6 月 22 日に燃料装荷を開始し、7 月下旬に原子炉起動。2 号は 8 月上旬に燃料装荷を開始し、9 月中旬に原子炉を起動するとしている。1号は当初 6 月 3 日、2 号は 7 月 15 日に再稼働(送電)の予定だったが、火災防護対策の不備が発覚し、審査と安易な対策の実施によって計画は遅れた。
 しかし、高浜 1・2 号は審査基準等に違反したままであり、危険な運転を許すことはできない。

 △火災防護対策の不備:緊急時に原子炉を冷却し安全に停止させるために必要な補助給水ポンプなどの重要設備は、A 系、B 系などと複数設置されている。火災で2系統が同時に機能しなくなる事態を防ぐため、耐火壁などで分離する必要がある。しかし 3 月に、関電と九電のすべての原発で審査基準通りの火災防護対策が実施されていないことが明らかになった。関電は、基準通りの対策には時間がかかるとして実施期限を明らかにすることもなく、電線管から水平距離 6m以内に可燃物を持ち込まない等の安易な「是正措置」を示した。規制庁は 5 月 12 日、これを「基準と同等」として認可してしまった。これでは基準の存在意義もない(8 頁)。

 △電気ケーブルの絶縁低下の問題:2016 年4月に改定された運転期間延長審査基準では、新たに「重大事故等環境下で機能が要求される電気・計装設備に有意な絶縁低下が生じないこと」が要求されている。しかし審査では「重大事故等環境下」は考慮されず、そのような検討・評価もなされないまま老朽原発 3 基の 20 年延長が認可された。この延長審査にかかわる欠陥は、2019年 11 月に公表された NRA(原子力規制委員会)技術報告によって明らかになっている(16 頁)。
 このように基準無視、安全性軽視がまかり通る異常な状況になっている。立地や周辺住民の安全など眼中にない。これらの背景には、GX原発推進政策による「原発の最大限活用」という政府の方針があり、規制委員会も率先して加担している。当面の再稼働が見込める関電原発では、「止めない」ことが最優先となり、同時に他の電力会社の審査の加速と再稼働も狙われている。

 4.福井県知事は関電の欺瞞的な計画を認めず、老朽炉3基の運転停止を求めるべき

 福井県議会は 6 月 23 日の県議会初日 16 時頃から全員協議会を開き、国から説明を聞くという。知事はその後に、立地自治体、県議会の意見を聞いて最終的に判断すると表明している。既に美浜町議会では、関電の今回の計画に厳しい批判の声が上がっている。そしてなにより、県民の声を聴く住民説明会等を実施すべきだ。
 知事自らが 6 月 19 日に、関電の計画が県との約束とは違っていることを念頭に、経産大臣に、今回の関電の計画とは別に、年末までに中間貯蔵の候補地を確定するように求めている。そうであるなら、関電は県との約束を果たしていないのだから、老朽炉3基の運転停止を同時に求めるべきだ。
 避難計画を案ずる関西連絡会は福井の皆さんと共に、6 月から高浜町で戸別訪問・カラーリーフの配布を続けている。原発関係の仕事についている家庭も多く、明確に再稼働に反対する声は多くはない。しかし、軒先や畑で、老朽原発の運転には多くの住民が不安を語ってくれている。福島原発事故の話になれば、ふる里に戻れなくなるとの不安の声も多く聴いてきた(6 頁)。また、高浜原発から5km 圏内等に入る舞鶴市でも、京都の市民が中心にチラシ配布が行われた。
 住民の不安や怒りの声に依拠して、高浜 1・2 号の再稼働に反対する運動を進めていこう。
 関電の欺瞞的な計画に批判の声を強めていこう。
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