[2022_09_08_06]核燃料サイクル政策の破綻が明らかな理由 「26回目」核燃料再処理工場の完成延期を発表、日本原燃(東京新聞2022年9月8日)
 
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核燃料サイクル政策の破綻が明らかな理由 「26回目」核燃料再処理工場の完成延期を発表、日本原燃

 日本原燃(青森県六ケ所村)は7日、同村で建設中の使用済み核燃料再処理工場について、9月中としていた完成目標を延期すると発表した。延期は26回目。稼働に必要な原子力規制委員会の審査が終わる見込みはなく、次の完成目標は明示しなかった。年内にあらためて公表するとしている。
 日本原燃の増田尚宏社長は青森市内で記者会見し「完成させて再処理を仕上げることが私の責任」と辞任を否定した。
 2020年12月に始まった詳細な設備設計や工事計画の審査が難航。原燃は2回に分けて申請する計画だが、1年半が過ぎても初回の申請分が認可されていない。主要設備は申請すらできていない状況で、規制委の更田豊志委員長は7日の記者会見で「審査の終了時期に見通しは持てない」と述べた。
 再処理工場は、使用済み核燃料を再利用する核燃料サイクル政策の中核施設。当初は1997年に完成する予定だったが、試運転中にトラブルが相次ぐなどして延期を繰り返してきた。

◆能力不足を露呈した日本原燃

 完成目標の9月を迎え、ようやく使用済み核燃料再処理工場(青森県六ケ所村)の26回目の完成延期を表明した日本原燃。能力不足で稼働に必要な審査はまったく進まない上、再処理した後に作る混合酸化物(MOX)燃料を使える原発も少なく、工場稼働の利点はない。再処理を要とする政府の核燃料サイクル政策の破綻は明らかだ。
 「審査にどう臨むか、私の見極めが甘かった」。原燃の増田尚宏社長は7日の記者会見で、審査を甘く見ていたことを認めた。
 2020年7月に基本的な事故対策が新規制基準に適合した後、同12月に申請した詳細設計や工事計画の審査では、無責任体質を露呈した。
 審査会合では、担当者間の連携が不十分で規制委の求める水準の説明ができず、議論がかみ合わない場面が繰り返された。関係部署の約400人を体育館に集めて作業し、情報共有の徹底を図った後も、審査担当の幹部が資料の実物を確認せずに未完成のまま規制委に提出しようとした。
 今年8月8日の会合でも、規制委の指摘を受けて修正したはずの資料に対し、規制委側から「時間をかけたのに中途半端なものを出してきた」と叱責されるなど改善にはほど遠い。
 また、関西電力大飯原発所長から6月に原燃の審査担当執行役員に就任した决得恭弘氏は、8月25日の規制委事務局との面談で「これまで多くの支援があったにもかかわらず、いまだ審査が進まず、改革は難しい」と吐露。経験のある外部人材を登用しても、組織の立て直しは望めそうにない。

 ◆どこで使う?MOX燃料

 再処理工場で取り出したプルトニウムを消費するには、MOX燃料を使って「プルサーマル発電」をする必要がある。
 現状でプルサーマル発電ができる原発は、再稼働済みの関西電力高浜3、4号機(福井県)、四国電力伊方3号機(愛媛県)、九州電力玄海3号機(佐賀県)の4基しかない。いずれも、海外から輸入したMOX燃料を使っている。
 電気事業連合会は、30年度までに12基でプルサーマル発電の実施を目指す。今後の候補に挙げる原発の多くは、新規制基準の審査が難航。福島第一原発事故を起こした東京電力の「いずれかの原子炉」で実施を見込むなど現実的な目標とは言えず、MOX燃料の利用増は絵に描いた餅だ。

 ◆再処理事業費は総額「14兆円」超

 さらに、再処理の過程で発生する高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の処分先も決まっていない。最終処分場の候補地選定に向け、北海道の寿都町と神恵内村で文献調査が進むが、北海道は受け入れに反対しており、先行きは不透明だ。核のごみの行き場が決まらないままでは、六ケ所村が事実上の最終処分場になりかねない。
 政府は8月末、脱炭素に向けた課題を議論するGX(グリーン・トランスフォーメーション)実行会議で、政治決断が必要な事項に「再処理、最終処分のプロセス加速化」を挙げた。しかし、再処理の需要はなく、事業を担う原燃の能力不足は深刻だ。破綻した核燃料サイクル政策を撤回しなければ、消費者からの電気代を基にした総額14兆円を超える再処理事業費は、無駄な負担となって将来世代に重くのしかかる。(小野沢健太、増井のぞみ)

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