[2021_03_19_08]東海第2原発運転差し止め判決 避難計画「不十分」、水戸地裁 原電、控訴の方針(茨城新聞クロスアイ2021年3月19日)
 
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東海第2原発運転差し止め判決 避難計画「不十分」、水戸地裁 原電、控訴の方針

 日本原子力発電(原電)東海第2原発(茨城県東海村)の安全性に問題があるとして、県内外の住民ら224人が原電に運転差し止めを求めた訴訟の判決が18日、水戸地裁であり、前田英子裁判長は「実現可能な避難計画や、実行する体制が整えられていると言うにはほど遠く、防災体制は極めて不十分」として住民側の請求を認め、運転を差し止めるよう言い渡した。原電側は控訴する方針を示した。
 判決は、広域避難計画の策定を進める30キロ圏の14市町村や県の対応をはじめ、安全性を確保した原発の再稼働を進める政府の方針に波紋を広げるとみられる。避難計画は県が2015年に策定したものの、現時点で計画策定済みの市町村は笠間、常陸太田、常陸大宮、鉾田、大子の5市町にとどまる。
 裁判の主な争点は、耐震設計の目安となる地震の揺れ(基準地震動)の設定▽基準地震動の設定を基にした安全対策▽津波や火山発生の想定▽実効性ある避難計画-などだった。
 判決理由で前田裁判長は、15万人以上の避難対象人口がいる日立、ひたちなか、水戸市の名を挙げ、いずれも避難計画の策定に至っていないことに言及。策定した5市町についても「災害対策本部の機能維持、複合災害時における第2の避難先や代替避難経路の確保など、検討課題を抱える」と指摘し、放射性物質による被ばくの恐れから「人格権が侵害される危険がある」と結論付けた。
 一方、基準地震動の設定や施設の耐震性、津波、火山などの想定については「いずれも審査基準に不合理な点があるとは認められない」として原子力規制委員会の審査を追認する判断を示した。
 同原発は、11年3月の東日本大震災で自動停止し、そのまま運転停止が続いている。19年2月に原電が再稼働の意向を表明。福島第1原発事故後に策定された新規制基準に基づく安全対策工事を、22年12月までの予定で進めている。再稼働には県と東海村の同意のほか、水戸市など周辺5市の事前了解も必要となる。
 原電の担当者は判決後の記者会見で、「当社の主張が理解されず誠に遺憾。到底承服できない」と述べ、19日にも控訴する考えを明らかにした。
 判決の効力は確定するまで生じない。福島第1事故以降、運転差し止めを命じた仮処分決定はあるが、訴訟の判決では関西電力大飯原発3、4号機の再稼働を認めなかった14年5月の福井地裁に次いで2例目。
 同原発を巡っては、住民側が12年、原電と国を相手に提訴。国には設置許可の無効確認や運転停止命令を求めていたが、裁判の長期化を懸念して18年、国への訴え部分を取り下げ、被告を原電のみに変更していた。

■判決骨子
・原電は東海第2原発を運転してはならない
・実現可能な避難計画と計画を実行する体制が整えられておらず、防災体制が不十分。安全性を欠き人格権侵害の危険がある
・原発30キロ圏内の14市町村で避難計画策定は5市町にとどまる。5市町の計画でも代替避難経路の確保などに課題
・地震や津波の想定、耐震性に欠落があるとは言えない

★東海第2原発
東海村白方に位置し、沸騰水型、出力110万キロワット。国内初の100万キロワット超えの大型原発で、1978年11月28日に営業運転を始めた。2011年の東日本大震災で自動停止し、そのまま運転を停止している。津波で非常用発電機3台のうち1台が使用不能となった。18年11月に原子力規制委員会が最長20年の運転延長を認めた。安全協定を拡大し、再稼働には県と東海村に加え周辺5市の同意が必要となる。
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