[2020_12_04_17]大飯原発、設置許可取り消し認める 大阪地裁判決(日経新聞2020年12月4日)
 
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大飯原発、設置許可取り消し認める 大阪地裁判決

 関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の耐震性を巡り、安全審査基準に適合するとした原子力規制委員会の判断は誤りだとして、福井県などの住民らが国に原子炉設置許可の取り消しを求めた訴訟の判決が4日、大阪地裁であった。森鍵一裁判長は「審査すべき点をしておらず違法だ」として、国に設置許可の取り消しを命じた
2011年の東京電力福島第1原発の事故以降、原発の運転停止につながる司法判断は仮処分を含め6例目。原子力規制委による原発の設置許可を取り消す司法判断は初めて。国は控訴する方向で検討する。
 大飯3、4号機は現在は定期検査中で稼働していないが、検査が終われば判決が確定するまで稼働できる。判決が確定した場合、関電はより厳格な耐震設計で工事をやり直し、改めて許可を得るまで稼働できない可能性が出てくる。原子力規制委は他の原発でも同様の手法で審査しており、判決が影響を及ぼす可能性がある。
 訴訟では、関電が算出した耐震設計の前提となる最大規模の揺れ(基準地震動)の評価を基に、設置を許可した規制委の判断が妥当かどうかが主な争点となった。
 関電が算出した基準地震動の評価は過去の地震規模の平均値を用いていたが、森鍵裁判長は「平均より大きい方向に乖離(かいり)する可能性を考慮していない」と指摘。関電の算出内容を容認した原子力規制委の判断について「地震規模の数値を上乗せする必要があるかどうか検討していない。看過し難い過誤、欠落がある」として審査が不十分だったとした。
 原告側は、関電や国が想定した揺れは平均値に基づくもので過小評価しており、3、4号機の耐震設計は不十分だと主張。これに対し、国側は数値は妥当で原発の安全性は担保されていると反論していた。
 原子力規制庁は「裁判所の十分な理解が得られなかった。関係省庁と協議の上、適切に対応したい」とコメント。補助参加人として訴訟に関わる関電は「極めて遺憾であり、到底承服できるものではない。速やかに国と協議の上、適切に対応する」としている。
 原発の安全審査基準を巡っては、11年の東日本大震災の教訓を踏まえ、13年に新規制基準が施行された。関電は新基準施行後に大飯3、4号機の審査を規制委に申請し、17年5月に合格。3、4号機は18年に再稼働し、その後定期検査に入った。

大飯原発3、4号機
 福井県おおい町にある出力が各118万キロワットと関西電力で最大の原子力発電所。1991〜93年に運転を開始した。2011年の東日本大震災後で国内の全原発が稼働停止する中、当時の民主党政権が定めた暫定基準に基づき唯一再稼働した。17年5月に原子力規制委の安全審査に合格。今年7月から3号機が、同11月から4号機が定期検査で停止している。3号機は配管で亀裂が見つかるなど検査が長引き、再稼働は21年2月以降になる見通し。関電は4号機について21年1月の再稼働を見込んでいる。
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