[2025_04_30_03]泊原発3号機“事実上の合格”審査書案取りまとめ 原子力規制委(NHK2025年4月30日)
 
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泊原発3号機“事実上の合格”審査書案取りまとめ 原子力規制委

 19:29
 北海道にある泊原子力発電所3号機について、原子力規制委員会は、新しい規制基準に適合しているとして、30日に事実上の合格を示す審査書案を取りまとめました。申請から11年以上と、これまでで最も審査に時間がかかっていて、北海道電力は2027年の再稼働を目指しています。
 30日に開かれた規制委員会の定例会合では、泊原発3号機の再稼働の前提となる審査について、北海道電力が示した安全対策などが新しい規制基準に適合しているとする審査書の案が議論されました。
 この中で、地震や津波の評価や対応のほか、重大事故時の対策として新たに設置した設備などを確認した結果が示され、規制委員会の5人の委員が全会一致で決定し、事実上の合格を意味する審査書案を取りまとめました。
 今後は、一般から意見を募るパブリックコメントなどを経て、審査に正式に合格する見通しです。
 北海道電力は、泊原発3号機を2027年のできるだけ早い時期に再稼働することを目指していて、現在、防潮堤の建設など、安全対策工事を進めています。
 泊原発3号機の審査については、北海道電力が、福島第一原発の事故から2年後の2013年7月に申請しましたが、敷地内の断層をめぐって、規制側から「北海道電力が示したデータでは信頼性が足りない」などと指摘されました。
 これを受けて追加調査を行うなどしたため審査が長期化し、申請から事実上の合格まで11年9か月と、これまでで最も時間がかかっています。

 原子力規制委 山中委員長「長期化の原因 1つは地震 津波の審査」

 原子力規制委員会の山中伸介委員長は、事実上の合格を示す審査書案をとりまとめたことについて「長期にわたった原因の1つは地震や津波の審査だったが、きちんと評価できた。北海道電力には今後も、安全の第一義的な責任があると理解したうえで進めてほしい」と述べました。
 また、審査が11年以上と長期化したことについて山中委員長は、2022年4月に開いた原子力規制委員会の臨時会合で、更田豊志前委員長や委員らが専門的な人材の不足が審査に影響していることや情報共有や説明が足りないことなどを指摘し北海道電力に苦言を呈したことに触れたうえで「地震や津波の評価ができる人材を社内にもっとそろえたほうがスムーズではないかと指摘したこともあった。それに対して北海道電力は、適切なリソースをかけて真摯(しんし)に対応し、後半の敷地内断層の評価などはスムーズに審査が進んだと理解している」と述べました。
 そのうえで「審査の進め方で改善すべき点は多々あったと考えているが、審査の順番や論点のまとめ方については改善しながら進めてきた」と振り返りました。

 地元 泊村の住民“安全対策の徹底や地元への説明を”

 北海道電力の泊原子力発電所3号機をめぐり、原子力規制委員会が、新しい規制基準に適合しているとして、事実上の合格を示す審査書案をとりまとめたことについて、発電所がある泊村では、北海道電力に対し、安全対策の徹底や地元への説明を求める声が聞かれました。
 60代の男性は「電気代が安くなるのであれば、早く再稼働したほうが助かるという気持ちがあります。北海道電力には安全対策を徹底しつつ、住民にも説明してほしいです」と話していました。
 30代の女性は「安全対策をきちんとしてもらえるなら、電気代も安くなると思うので再稼働には賛成です。村民への説明があれば再稼働に納得する人もいると思うので、北海道電力による説明会などがあればよいと思います」と話していました。
 40代の男性は「早く再稼働してほしい気持ちはあるが、原発はすぐ近くにあって万が一のことがあれば避難しないといけないので、安全面はしっかりと対応してほしいです」と話していました。
 札幌市内でも聞いたところ、札幌市豊平区に住む70代の男性は「道内には新たに半導体工場ができるなど、電力の需要の高まりが見込まれるので、原発の再稼働は賛成です。再稼働した場合は、電気料金が安くなることを期待します」と話していました。
 札幌市手稲区に住む50代の女性は「原発は、事故など万が一のことがあると、何もないでは済まされないので、不安です。電気代もあまり下がらないのなら、再稼働しないほうがよいと思います」と話していました。

 鈴木知事「予断をもって申し上げる段階ではない」

 鈴木知事は記者団に対し、再稼働に同意するかどうかの判断について「審査は最終段階に入ったと考えているが、今後、パブリックコメントなどがあり審査が継続中のため、予断をもって申し上げる段階ではない。具体的な内容が示された場合には道議会の議論などを踏まえて適切に対応していきたい」と述べました。
 また、地元同意の対象となる市町村について「再稼働にかかる地元同意の範囲についてはさまざまな意見があるが、国が明確に範囲を確定する必要がある」と述べました。

 北海道電力 齋藤社長 具体的な値下げ幅には言及せず

 北海道電力の齋藤晋社長は30日行った決算発表の記者会見の中で、泊原子力発電所3号機をめぐり、原子力規制委員会が新しい規制基準に適合しているとして、事実上の合格を示す審査書案をとりまとめたことについて「専門的な知見不足で、敷地内にある断層の評価に時間を費やし、11年以上という長い時間がかかったことが正直な思いだ。再稼働の前提となる審査については大詰めだと思っているが、次の工程である、工事計画や保安規定の認可や使用前の検査がまだまだ残っている」と述べました。
 そのうえで、電気料金について「全国的に高い料金だということは承知していて、お客様に負担をかけていると思っている。再稼働により火力発電の燃料費を削減するメリットがある」と述べ、泊原発3号機が再稼働した場合に電気料金を値下げする考えを改めて示しましたが、具体的な値下げ幅については言及しませんでした。

 泊原発3号機 審査最長の11年以上

 原子力規制委員会による再稼働の前提となる審査が申請から11年以上と、これまでで最も時間がかかっている泊原発3号機の審査。
 長期化した要因の1つは敷地内を通る断層をめぐる議論でした。原子力規制委員会が定める規制基準では、将来、地震を引き起こす可能性のある活断層の上に安全上重要な設備を設置することを認めていません。
 北海道電力は審査の中で、泊原発の敷地内を通る11本の断層についてボーリング調査の結果などのデータを示し、3号機の直下には活断層はないと説明しました。
 また、安全上重要な設備の直下でなくても、周辺に活断層があれば、想定される最大の地震の揺れを算出し、設備の耐震性の基準に用いる必要があります。
 北海道電力は、11本の断層について調べ、いずれも、活断層ではないと主張しました。
 これに対して規制側は、審査当初から「データの不足」を指摘。
 2016年に実施した委員らによる現地調査を踏まえ、このうち1号機のタービン建屋の下を通るFー1断層について、北海道電力が活動性を否定する根拠としている火山灰の層のデータは、信頼性が足りないとして、2017年、追加の調査が必要だとしました。
 これを受けて、北海道電力は、新たに地層を切り開くなど大規模な追加調査を行ってデータを補充。
 およそ12万年から13万年前より新しい時代の活動が認められないとして活断層ではないとあらためて主張しました。
 規制側がおおむね妥当だと判断するまで8年かかり、想定される地震の揺れは申請当初の550ガルを上回り、最大693ガルとなりました。
 また、地震の影響で起きる津波への対策も審査の論点の1つとなりました。
 北海道電力はもともと海抜16.5メートル、長さ1.2キロあまりの防潮堤を建設していましたが、地震の液状化によって沈下するおそれがあるという指摘を受けました。
 このため、工法を見直し、岩盤から基礎を支える防潮堤を建設し直すことを決め、設計方針の審査が追加で行われました。
 北海道電力は設計上、最大の津波の高さを17.8メートルと想定し、海抜19メートルの防潮堤を建設する予定で、北海道電力は現在、工事を進めています。
 2013年7月に再稼働の前提となる審査を申請してから11年9か月。北海道電力は、再稼働の目標を2027年のできるだけ早い時期としています。

 国内の原発 新規制基準の審査合格10原発17基

 東京電力福島第一原発の事故のあと、新たに作られた規制基準の審査に合格したのは10原発17基で、泊原発3号機がパブリックコメントなどを経て正式に合格すると18基目です。
 このうち、泊原発と同じ「加圧水型」と呼ばれる原発は、6原発12基で、残る4原発5基は、事故を起こした福島第一原発と同じ「沸騰水型」のタイプです。

 ◇「加圧水型」で合格
 福井県
 ▽美浜原発3号機
 ▽大飯原発3号機と4号機
 ▽高浜原発の1号機から4号機
 愛媛県
 ▽伊方原発3号機
 佐賀県
 ▽玄海原発3号機と4号機
 鹿児島県
 ▽川内原発の1号機と2号機
 この中で、泊原発と同じ日に再稼働の前提となる審査を申請した川内、高浜、伊方、大飯の各原発を含め、いずれもすでに再稼働しています。
 ◇「沸騰水型」の原発のうち、2024年に再稼働
 宮城県
 ▽女川原発2号機
 島根県
 ▽島根原発2号機
 一方で、
 ◇審査に合格しているものの、地元自治体の了解が得られていなかったり、安全対策工事が終わっていなかったりして、再稼働していない原発
 新潟県
 ▽柏崎刈羽原発6号機と7号機
 茨城県
 ▽東海第二原発
 このほか、
 ◇現在、原子力規制委員会の審査を受けているのが、
 ▽泊原発1号機と2号機を含め、6原発8基

 地元自治体の「判断」再稼働への焦点に

 再稼働に向けて焦点となるのが、地元の自治体の判断です。
 再稼働にあたって、地元の同意を得ることについて、法律の規定はありませんが、これまでに再稼働した原発では、いずれも地元の自治体が同意しています。
 また、全国のほかの原発では、規制委員会の審査に合格しても、地元の同意などに時間がかかり再稼働に至っていないケースもあります。
 北海道と、原発が立地する泊村、それに、周辺の共和町、岩内町、神恵内村は、北海道電力との間で「安全協定」を結んでいますが、道によりますと、原発の再稼働への同意については書かれていないということです。
 道は、「地元同意」の対象となる自治体は、国が示すべきだという立場です。
 今後、「地元同意」の対象がどうなるのか、そして、知事や自治体のトップがどのような判断を下すのかが注目されます。
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