[2020_01_18_11]伊方 2度目差し止め 司法信じ闘う 女川 訴え続ければ道は開ける(東京新聞2020年1月18日)
 司法が四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)に2度目の「ノー」を突きつけた。地元住民が申請した仮処分で、広島高裁が運転差し止めを決定したのだ。17年、前回の差し止め決定の時は、その後に司法判断が覆った。今回も法廷での闘いはまだ続くが、とにかく各地で差し止め訴訟を起こしたり、再稼働に反対したりしている人たちは勢いづいた。決定をどう受け止めたのかまとめた。
           (安藤恭子、大野孝志、片山夏子)

 宮城県女川町の元町議高野博さん(76)は車に乗っていた。東北電力女川原発(宮城県女川町、石巻市)の問題点を学ぶ学習会の案内書チラシを配って回っているところだった。
 その時、ラジオのニュースが伊方の決定を伝えた。「あぁ!よかった」と声が出た。訪ねた民家で「聞いたか。よかったなー」と声を掛けられた。
 今は止まっている女川原発だが、原子力規制委員会は昨年11月、再稼働にゴーサインを出した。一部の工事を終え、地元自治体の合意を取り付ければ、もう動かせる状態だ。
 石巻市民らが、県知事と市長に再稼働に同意しないよう求める仮処分を仙台地裁に申請している。建設段階から原発に反対してきた高野さんは、仮処分に期待しつつ「女川は震災で数多くのひび割れができた。辛うじて過酷事故にはならなかったが、絶対に動かしてはならない」と語った。

 2011年に起きた福島第一原発の事故からこれまでに、司法は関西電力の大飯(福井県おおい町)、高浜(同県高浜町)、17年の伊方で運転を止める判断を示した。ただ、いずれも覆っている。それでもこの日の決定が出た。高野さんば「諦めないで訴え続ければ道が開けると勇気づけられた」と喜んだ。
 九州電力川内原発。今回の決定が「噴火の影響が過小評価されている」と指摘した阿蘇山に、伊方原発と同様に近い。避難が難しい島が近くにある点も同じだ。
 地元の鹿児島県薩摩川内市に住む鳥原良子さん(71)は外出中、スマートフォンに入った速報で広島高裁の決定を知った。
 「まず、うれしい。原発絡みの裁判では、住民側が負けることが多いですから。勝つことが増えるといいですね」

 川内原発1、2号機は15年に相次いで再稼働した。16年4月、福岡高裁宮崎支部が、運転差し止め請求を退けた。理由は「巨大な火山噴火のように発生の可能性が低い災害は社会通念上、無視し得る」ということだった。
 現在も続く二件の訴訟で原告になっている鳥原さんは「原告の負けが多いのは、裁判官が原発の実態を知らないからでは。広島高裁の裁判官ば原発の実態を勉強してくれたんだなと感じた。うれしい判決が増えることを信じて、地元の声を電力会社や国に届けたい」と話した。

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