[2021_03_23_04]むつ中間貯蔵共用案 公表3カ月 県議会 議論深まらず 静観の県 答弁に不満も(東奥日報2021年3月23日)
 
 使用済み核燃料中間貯蔵施設(むつ市)の共同利用構想が明らかになって以降、初めて開かれた定例県議会が22日、閉会した。主に4議員が一般質問などでこの問題を取り上げたが、「ほうっておいている」(三村申吾知事)と静観の構えをみせる県側と議論は深まらず、論戦は低調だった。
 電気事業連合会は昨年12月、東京電力、日本原子力発電の2社が出資して建設したリサイクル燃料貯蔵(RFS)・中間貯蔵施設を巡り、全国の原発にたまり続ける使用済み核燃料対策の一環として、電力各社で共同利用したいとの構想を県とむつ市に報告。「地元理解を大前提に検討に着手したい」とする電事連に対し、三村知事は「聞き置くだけ」と突き放した。
 「地元理解、共同利用の具体的な内容がない現状では申し上げるものはない」。県議会一般質問で、県の考えや今後の見通しを問われた三村知事は、昨年12月の対応を説明しつつ踏み込んだ答弁を避けた。その上で、立地地域の負担に言及し「国が前面に立って対応しなければ三つの立地地域だけに問題が押しつけられかねない」と強調した。
 鹿内博議員(県民の会)は一般質問、質疑の2度にわたって共用案について質問。2005年の県議会全員協議会で当時の東電社長が「貯蔵するのは2社の原発で発生する燃料のみ」と発言したことと、県、市、事業者が結んだ立地基本協定は「県民との約束だ」とし、共用案はこの約束に違えると主張した。
 「国が前面に立てば共同利用を認めるのか」と問い詰めた鹿内議員に対し、若木憲悟エネルギー総合対策局長は「共同利用前提の話にお答えすることはできない。理解いただきたい」と述べるにとどめた。
 むつ市区選出の菊池憲太郎議員(自民)は「他人の軒先でなく母屋を家主の断りもなく勝手に借り受けしようとすれば誰でも反発する」と表現し、市が電事連の構想に反発していることに理解を示した。ただ、中間貯蔵事業そのものに対しては「意義や有益性は否定するものではない」と発言。共用案をてこに地域の課題解決に取り組むベきだ−とする意見が周辺にあることを紹介し、知事に「多様な意見に耳を傾け、立地地域、県民にとって何が幸せか十分考慮してほしい」と求めた。
 県議会での論戦に、複数の与野党県議は「県の答弁は『事業者が』『国が』ばかり。県の考えが全く見えない」と不満げ。ある野党議員は「大きな問題なのに質問が少なすぎる。議論が足りなかった」と議会側の反省点も口にした。
 一方、共用案の公表から3カ月がたつたが、現時点で電事連、国の表立った動きはない。電事連は、市が示した「懸念」への回答を直接説明したいとの意向だが、新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言の発令(現在は解除)など社会的な要因も相まって実現には至っていない。また、「検討に積極的に参画したい」と真っ先に意思表明した関西電力が、福井県外に設置する中間貯蔵施設の候補地明示を23年末に先送りしたこともあり、検討を急ぐ必要性が薄れた感も否めない。
 今後の展望について電事連は本紙取材に「予定や段取りなど現時点で決まっているものはない」としている。
     (本紙取材班)
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