[2020_12_19_05]むつ中間貯蔵 市長反発「共用ありき」 電事連が説明 知事「聞き置く」 県、市 議論の余地残す(東奥日報2020年12月19日)
 
 大手電力でつくる電気事業連合会の清水成信副会長が18日来県し、むつ市に立地するリサイクル燃料貯蔵(RFS)の使用済み核燃料中間貯蔵施設について、原発を持つ電力各社で共同利用する案を県と市に説明した。清水氏は、検討の前段階であるとし「地元の理解が大前提」と繰り返し.強調したが、宮下宗一郎市長は「施設があるからーという理由は論理必然性がない。全国で探すプロセスがあってしかるべき。懸念事項が解決されない以上、共用化ありきの議論はできない」と反発した。           (本紙取材班)

 三村申吾知事は、共用案が報道先行で明らかになった点などに触れ「地域、県民に混乱、不安を生じさせたのであれば誠に遺憾」と不快感を示し、「全くの新しい話。本日は聞き置くということだけにさせていただく」と回答を留保した。
 同施設は、RFSに出資する東京電力ホールディングスと日本原子力発電の燃料受け入れを前提に建設され、RFSは2021年度をめどに操業を開始する方針。共用が実現すれば他電力からの燃料受け入れが可能になる。
 清水氏は、経済産業省の小澤典明首席エネルギー・地域政策統括調整官と共に県庁とむつ市役所を訪問。(1)一般の原発でブルトニウムを燃やすプルサーマル発電について「2030年度までに少なくとも12基」とする新たな計画(2)日本原燃・六ケ所再処理工場などの完工支援(3)使用済み燃料の最終処分場の選定への協力ーなどの方針についても説明した。
 三村知事は共用案を除く方針について「(核燃)サイクル推進への決意と受け止めた」と一定の評価。結果の伴う行動と不退転の決意を、電事連と国双方に求めた。
 一方、宮下市長は「青森県、むつ市は核のごみ捨て場ではない。中間貯蔵施設は最終処分場ではない。あたかも最終処分のような印象を持たれて、地域が深く傷ついている」と共用案を批判。小澤氏は「(燃料は)ごみではない。資源として活用するのが基本だ。(共用化は)全国の燃料集約でもない」と国の方針を説明し「むつ市民の思いを最大限尊重して事業を通める、と肝に銘じる。改めて説朋の機会をいただきたい」と続けた。
 電事連の池辺和弘会長(九州電力社長)は18日、都内で開いた会見で「まずは理解をもらい、その後、検討に着手するという順序だと私は思う」とし、地元の理解がないままで検討は進めないとの認識を示した。

 県、市 議論の余地残す
 解説

 むつ市の使用済み核燃料中間貯蔵施設を電力各社で共同利用する電気事業連合会の検討案に、宮下宗一郎市長は「共用化ありきの議論ではない。施設は最終処分場ではない」と強く反発、三村申吾知事は報道が先行したことなどへの不快感を示し「聞き置く」とするにとどめた。ただ、両者とも批判のトーンに濃淡こそあれ、議論の余地は残した印象を受ける。
 全国の原発から使用済み核燃料を一時的にせよ、むつ市に搬入するにとは、業界の救済につながる半面、本県にメリットが見いだせないのが実情。「各社の使用済み燃料対策の選択肢を増やす意味で有効。最終的には再処理工場との連携のの中で(核燃料)サイクルのに大きく資する。」(電事連)とするのが精いっばいだった。
 再処理工場を中核に据える核燃サイクルの推進は、本県が何度も国に確認、求めてきた経緯がある。共用案には梶山弘志経済産業相が理解を示しており、サイクル推進の「御旗」に組み込まれた共用案をめぐる議論の進展には、国の出方も焦点になりそうだ。
 2005年に県と市、東京電力、日本原子力発電の4者が交わした中間貯蔵施設の立地通告は、東電と原電の使用済み燃料を一時貯蔵する旨が明記されている。他電力からの燃料受け入れには言及していない。
 電事連は共用の検討開始時期について「地元のご理解を頂くのが先」との姿勢を繰り返し強調する一方、立地協定見直しの必要性については「可否も含めて検討することになる」と明言を避けた。事業者は、協定が地元の理解を得た上で成り立っていることを直視する必要がある。
 最終処分地選定の出口はまだ見えない。05年の協定書に記された一時貯蔵の期間は最大50年。地元にのしかかる負担はただでさえ大きい上に、協定内容変更の現実は重い。「地元理解」の意義が問われる。
     (安達一将)
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