[2023_08_19_05]高速炉「常陽」再稼働遅れ 26年度半ばに 茨城・大洗 安全対策追加で(茨城新聞2023年8月19日)
 
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高速炉「常陽」再稼働遅れ 26年度半ばに 茨城・大洗 安全対策追加で

 日本原子力研究開発機構は18日、高速実験炉「常陽」(茨城県大洗町)の再稼働時期が約1年半遅れ、2026年度半ばになると発表した。原子力規制委員会の審査結果を受け、追加の安全対策工事に時間がかかるためとしている。規制委に同日、新規制基準に基づく工事計画の変更を届け出た。
 常陽は7月、再稼働の前提となる新規制基準の適合審査に合格した。機構によると、審査の過程で、電源ケーブルを燃えにくくする工事や、ナトリウム配管の耐震化など安全対策の強化を規制委から求められていた。こうした追加工事での資材確保などに時間がかかると説明した。
 審査の合格時、再稼働時期については、25年3月を目指すとしていた。
 機構は常陽の運転再開後、停滞する高速炉開発や高速中性子を利用した医療用ラジオアイソトープ(RI)の製造を行う方針を示している。延長に伴う影響について、開発や製造の計画に遅れが出ないよう「(中性子を用いた)照射試験やRI製造をしっかり行っていく」と強調した。
 常陽の再稼働には、耐震対策や火災対策のほか、格納容器の破損を防ぐ断熱材の設置や中央制御室外への原子炉停止盤の新設、炉心や制御棒などの安全対策工事が行われる。着工には原子力安全協定に基づき、県と大洗町の「事前了解」が必要となるが、機構は「工期の延長に関係なく、予定通り安全対策を説明する」としている。
 県庁で記者会見した高速炉サイクル研究開発センターの関根隆部長は「苦渋の決断だが、変更することとした。しっかり安全対策を行うことが重要」と述べ、火災対策や主冷却建物の地盤を補強し、県や地元の理解を得た上で運転再開を目指すと説明した。
 常陽は国内唯一の高速炉で発電設備はない。廃炉になった高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の前段階に位置付けられる研究施設。1977年に運転を開始し、実験装置のトラブルで2007年から運転を停止している。
 使用済み燃料から取り出したプルトニウムとウランを混ぜた「MOX燃料」を使用。冷却材は燃えやすい性質のナトリウムを使う。
 事前了解を巡っては、県は原子力施設の安全性を検証する「県原子力安全対策委員会」と、原子力政策を審議する「県原子力審議会」の2機関で独自に安全性を審議し、隣接市町村の意見聴取をした上で、判断する方針を示している。
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