[2021_07_31_02]高温ガス炉が再稼働−「脱炭素」に便乗して原子力温存政策が加速 実験炉で出力は小さいが、いま首都圏に最も近い稼働原子炉となる 原子力温存のシナリオの一環 上岡直見(環境経済研究所代表)(たんぽぽ舎2021年7月31日)
 
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高温ガス炉が再稼働−「脱炭素」に便乗して原子力温存政策が加速 実験炉で出力は小さいが、いま首都圏に最も近い稼働原子炉となる 原子力温存のシナリオの一環 上岡直見(環境経済研究所代表)

 新型コロナやオリ・パラに隠れて注目されないが、2021年7月30日に、茨城県大洗町の日本原子力研究開発機構の高温ガス炉(HTTR)が再稼働した。(※1)
 HTTRは発生した高温ガスでタービンを回して発電するとともに、熱の一部を使って水素の製造にも使える。ただし現在の実験炉はタービンや水素プラントは接続されておらず単体での試験である。
 2020年6月に規制委員会から「合格」を受けていながら今まで延期された理由について、原子力機構は新型コロナの影響で準備が遅れたとしているが、商用発電炉のような特重設備や堤防強化などが不要で、準備は容易であるはずなのに、オリ・パラのどさくさまぎれに合わせた意図も感じられる。
 実験炉で出力は小さいが、いま首都圏に最も近い稼働原子炉となる。実験炉ということもあってか明確な反対運動や差止め訴訟等も起きていないが、原子力温存のシナリオの一環である。
 原子力機構では、カーボンニュートラル政策を受けて温暖化対策に不可欠と説明しており茨城県知事も同調する発言をしている。(※2)
 しかし技術的にはまだ未熟であり「第二のもんじゅ」になる可能性も高い。(※3)

 たんぽぽ舎でも、10月にHTTRほかいわゆる小型原子炉の問題について学習会が予定されている。

※事故情報編集部より補足
  「幻想の新型原子炉」高温ガス炉(HTGR等)と小型原子炉
 お 話:後藤政志さん (元東芝、原子炉格納容器設計者)
 日 時:10月14日(木)18時より21時(講師のお話は19時より)
 会 場:「スペースたんぽぽ」 予約必要です

(※1)『日経』「原子力機構、高温ガス研究炉の運転再開」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA300BN0Q1A730C2000000/
(※2)原発も脱炭素に有用 カーボンニュートラルで知事
    県、新たな産業振興構想
『東京新聞(茨城版)』
https://www.tokyo-np.co.jp/article/108304
(※3)上岡直見『走る原発 エコカー 危ない水素社会』コモンズ, 2015年
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