[2021_02_28_02]小泉元首相と中川秀直氏が3.11前に語る「脱原発」(毎日新聞2021年2月28日)
 
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小泉元首相と中川秀直氏が3.11前に語る「脱原発」

 東京電力福島第1原発事故から3月で10年を迎えるのを前に、小泉純一郎元首相と中川秀直元自民党幹事長が東京都内で記者会見した。原発事故後、小泉氏が脱原発を主張しているのは広く知られているが、自民党の実力者だった中川氏はいま何を訴えているのだろうか。【毎日新聞経済プレミア・川口雅浩】
 「七十数年前、日本が廃虚になったあの時の歴史もそうだが、どんな立場の人にも誤りはある。問題は現実を踏まえ、それを変える勇気と責任があるかどうかだ」
 中川氏はいきなり、そんな話を始めた。「私はかつて政府の原子力委員長、科学技術庁(現文部科学省)長官だった。原発推進派の責任者だったわけだが、あのとき一生懸命やったことは誤りだったと、10年前の事故で思い知った」と語った。
 1996年の第1次橋本内閣で、中川氏は当時の科技庁長官(原子力委員会委員長を兼務)に就任し、高速増殖原型炉「もんじゅ」など核燃料サイクルを推進した。中川氏は自身の「誤り」を具体的に語らなかったが、自民党政権として原発を推進したことを指しているのは間違いなかった。
 中川氏は「誤りの切り替えができないところに第二次世界大戦の悲劇もあったし、原発から卒業できない、日本のだらしなさがある」と、痛烈に日本の社会や政治を批判した。

 ◇小泉元首相の主張に中川氏も共感

 記者会見は「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟(原自連)」が開いた。原自連は城南信用金庫相談役の吉原毅氏が会長、小泉氏と細川護熙元首相が顧問、中川氏らが副会長を務め、学者や実業家、NPO関係者らで組織する市民団体だ。
 小泉氏は「原発は安全でコストが安く、クリーンだと言われたが、全部ウソだとわかった。日本は太陽光、風力、水力に恵まれた国で、政府が音頭をとれば必ず原発ゼロでやっていける」と主張。中川氏も同調した。
 かつて政府・与党の重鎮だった2人が並んだ記者会見は、核廃棄物の最終処分場問題や菅政権のエネルギー政策、さらには今秋までに行われる次期衆院選などに質問が及んだ。
 小泉氏は「日本は地震、津波、火山があって、原発をやってはいけない」「政府が原発をやめるって言えば、国民の多数は支持する。やればできるのに(やらないのは)、私は残念だと思っている」と、菅政権に不満を漏らした。核廃棄物の最終処分場については「今のままでは100年たってもできないだろう。核廃棄物をもう増やさないという前提で、政治の責任でやっていくしかない」と述べた。

 ◇「リーダーの決断があれば」

 中川氏は菅政権でエネルギー基本計画の見直しが進んでいることなどを念頭に「与党も原発の再稼働は主張しているが、新増設は口にもできない。これは(脱原発を求める)世論の力だと思う」と述べた。
 最後に中川氏は「原子力ムラとか、しがらみはあるが、私は自民党、野党を問わず、トップリーダーが決断をもって臨めば大きく動くと思う。世論が『そうしろ』といえば、あっという間に変わるだろう」と、次期衆院選に期待を寄せた。
 現職の自民党国会議員の中でも脱原発を主張する政治家はいるが、ごく少数にとどまっている。
 小泉氏は09年、中川氏は12年に政界を引退している。両氏とも原発事故後に現実から学び、教訓を得たという。両氏が所属する原自連は原発事故から10年となる3月11日、日本の現状と未来を考える国際会議をオンラインで開くという。
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