[2020_11_06_02]北海道寿都町は最終処分場調査応募を撤回せよ 「10万年後」に誰も責任は取れない 日本学術会議が提言「火山列島に安定した地層はない」 大今歩(高校講師・農業)(たんぽぽ舎2020年11月6日)
 
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北海道寿都町は最終処分場調査応募を撤回せよ 「10万年後」に誰も責任は取れない 日本学術会議が提言「火山列島に安定した地層はない」 大今歩(高校講師・農業)

◎ 8月13日、北海道寿都町は、原発の使用済み核燃料から出る高レベル放射性廃棄物の、最終処分場の調査への応募を検討していることを明らかにした。
 片岡春雄町長は、10月8日に応募を表明した。「最大20億円の交付金が得られ財政改善が見込める」と検討理由を述べた。梶山経産省は「大変ありがたい」と歓迎した。
 これに対して北海道の住民から反対の声が広がっている。
 「核のごみ」最終処分場調査について考えたい。

◎ 2000年に、「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」が制定された。その事業主体として、NUMO(原子力発電環境整備機構)が設立され、候補地を求めてきた。
 文献調査(過去における地震などの調査)に応募しただけで、2年間の調査期間中、20億円が交付される。寿都町はこの交付金を目的に応募しようとしている。その後、概要調査(地層の実施調査)が行われ、精密調査の後、地下処分施設が操業を開始するのは50年後である。

◎ 地層処分の問題点は、第一に、地震国・火山列島の日本で高レベル放射性廃棄物を地層処分してはならないことだ。高レベル放射性廃棄物とは、使用済み核燃料を再処理してプルトニウムなどを分離・回収して残った放射性レベルの高い廃棄物だ。
 これまでの使用済み核燃料を全部再処理すると、約2万5000本のガラス固化体ができる。ガラス固化体一本の放射能は、広島原発30発にも達する。大変危険なものだ。
 しかも、放射能が安全なレベルに下がるまでに10万年以上かかる。
 10万年後のことに誰も責任を取れないことは明白である。日本以外の原発保有国でも地層処分が検討されているが、フィンランドのオンカロ以外では建設されていない。世界有数の地震国で火山列島の日本に、安定した地層は無い。責任を取れないことを推進してはならない。

◎ 第二に、核燃サイクルはもはや破綻している。まず再処理によって抽出されたプルトニウムを用いる高速増殖炉もんじゅは、廃炉となった。ウランとプルトニウムを混ぜたMOX燃料を用いるプルサーマル発電は4基のみで、プルトニウムの使用量は限られる。
 その上、使用済み核燃料を再処理する青森県の六ヶ所村の再処理工場は1993年に着工したが、トラブル続きで操業を24回も延期してきた。7月29日、原子力規制委員会は安全対策が新規則基準に適合すると認めたが、操業は見通せない。このように核燃料サイクルは破綻している。

◎ 寿都町の片岡町長は、「皆が最終処分を『いらない』と言うのは恥ずかしいことではないですか?(中略)嫌なのはわかるが、核のごみの問題は一歩踏み出す時期です」と述べた(9月8日「毎日」)。「核のごみ」の最終処分から目を背けるのは恥ずかしいことだと言うのだ。
 片岡町長は「核のごみ」処分を、住民がごみ焼却炉建設などを「迷惑施設」として反対することと混同しているが、両者は全く異なる。
 2012年9月11日、日本学術会議は原子力委員会の諮問に答えて、「回答・高レベル放射性廃棄物の処分について」(以下「回答」)を発表。「暫定保管」と「総量管理」を提言する。これが「核のごみ」の解決策となり得る。

・まず「暫定保管」とは、「高レベル放射性廃棄物を(中略)数十年から数百年という暫定期間に限って他への搬出可能な形で安全性に厳重な配慮をしつつ保管すること」である。地層処分でなく、地上で保管するというのである。
・「総量管理」は、発生上限の確定(原発ゼロ)と発生量の抑制(原発増加の抑制)の意味合いを含む。
 このように、「回答」は「暫定保管」と「総量管理」を進めることにより地層処分は必要がないという、現実的でバランスのとれた提言である。
 ただし「回答」の「高レベル放射性廃棄物」には、「使用済み核燃料」と「ガラス同化体」が含まれるが、核燃サイクルは破綻している。
 危険な再処理はせず、使用済み核燃料のままで保管すべきだ。また、「総量管理」は原発ゼロを目指す。

◎ 日本学術会議の提言に耳をかさず、核燃サイクルや地層処分にこだわる政府が、今日の問題を生んでいる。
 そして「核のごみ」を増やさないため、原発廃絶を早急に実現することが何よりも大切である。
 北海道寿都町は、地層処分の文献調査に応募してはならない。

     (「人民新聞」2020.10.15 No1730より了承を得て転載)
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