[2020_10_22_02]核燃サイクル協 国、政策堅持を確約 電事連「プル計画 早期に」 最終処分「国が前面に」官房長官 先行き不透明感拭えず(東奥日報2020年10月22日)
 
 核燃料サイクルの要となる日本原燃・六ヶ所再処理工場の審査合格と完工延期を受け、三村申吾知事がサイクル政策に関する国の取り組みを確認、要請する「核燃料サイクル協議会」が21日、首相官邸で開かれた。加藤勝信官房長官は、「国、事業者が最大限の努力を払うことが重要と考えている。地元の声に配慮しつつサイクル政策を進める」とし、政策堅持を明言した。課題となっているプルトニウム利用については、大手電力会社でつくる電気事業連合会の池辺和弘会長が「早期に利用計画を示す」と述べた。(加藤景子)

 協議会の開催は2010年11月以来、約10年ぶり。加藤営房長官の冒頭のあいさつ以外は非公開だった。
 三村知事は国に対し(1)原子力発電・サイクル政策の推進、プルトニウム利用の道筋の明示、高速炉実現に向けた取り組み(2)本県を高レベル放射性廃棄物の最終処分地にしないこと(3)原子力の人材育成、研究開発ーの3点を確認、要請した。
 終了後、都道府県会館で会見した三村知事によると、最終処分問題を巡って加藤官房長官が「最終処分の実現に向け国が前面に立って取り組む」、池辺会長も「六ヶ所村に搬入したガラス固化体の搬出期限を順守する」と説明した。
 梶山弘志経済産業相も、最終処分地選定に関し「県民の不安の声にも配慮し、進捗などを積極的に情報発信、説明する」と述べるなど、地元に配慮した発言があったという。三村知事は「地域の不安解消のためにいろいろなことをやっていくというところまで踏み込んだ発言をもらった。政府一体としての対応を厳しく見極め、慎重かつ総合的に対処する」と話した。
 一方、三村知事は前回、六ケ所再処理工場に次ぐ「第2再処理工場」実現へ取り組みを強化するよう国に要望していたが、「今は六ヶ所工場本体が進むか進まないかの状況だ」として今回は言及しなかった。
 協議会には原燃の増田尚宏社長も出席。終了後、「政府一体としてサイクル推進に取り組むことが確認され、大変心強い」とコメントした。

[解説]
国策の核燃料サイクル政策に、ぶれはないかー。三村申吾知事の問いに、政府はあらためて「堅持」を約束した。だが、その足元はもろく、先行きの不透明感が拭えたとは到底言えない。
 日本原燃・六ヶ所再処理工場は7月に安全審査に合格。積年の大きな課題である高レベル放射性廃棄物の最終処分問題は、北海道の2町村が選定手続きの第1段階である文献調査に入ろうとしている。一見、サイクル実現への条件は整いつつあるように見える。
 前回の核燃料サイクル協議会からの10年間に、福島第1原発事故が発生し、プルトニウム消費の要とされた高速増殖原型炉もんじゅの廃炉が決まった。プルサーマル原発は再稼働が進まず、余剰プルトニウムには国際的に厳しい視線が向けられる。サイクル政策を担保するエネルギー基本計画は2018年に初めてプルトニウムの削減方針を盛り込み、「全量再処理」方針には黄信号がともる。先送りされてきた問題は一層、顕在化している。
 国の「ぶれのない推進姿勢」を確認し安心材料を得たい県だが、協議会での各閣僚の発言はこれまでの内容の域を出ないものだった。エネルギーを取り巻く環境が激変する中で、国の言葉を額面通り受け取ってもいいのだろうか。
 協議会はかつて、サイクル施設を複数抱える本県の「伝家の宝刀」と言われた。関係閣僚のみならず官房長官まで出席するこの場は、他県にはない本県独自のものだ。三村知事は満を持して宝刀を抜いたが、その重みは国、事業者に伝わっただろうか。
     (加藤景子)

核燃料サイクル協鎌会 前知事の木村守男氏が核燃料サイクル事業に関する意見調整の場として国に要請し、1997年9月に設置された協議機関。初回は国側から梶山静六官房長官(当時はオブザーバー)、佐藤信二通産相、近岡理一郎科学技術庁長官=いずれも当時=が出席。県は、六ヶ所再処理工場への使用済み核燃料搬入に関する安全協定の締結を前に、安全確保に向けた政府一体の取り組み、高レベル放射性廃棄物の最終処分の見通し明示、電気料全割引の全県適用などを求めた。協議会は核燃料サイクル政策上、重要な節目と判断した県側が関催を要請し、国が主催する流れとなっている。木村県政で6回、三村県政で今回を含めて6回開かれた。
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