[2020_01_30_02]社説:MOX取り出し 政策行き詰まり認めよ(京都新聞2020年1月30日)
 
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社説:MOX取り出し 政策行き詰まり認めよ

 政策の行き詰まりを直視し、速やかに転換を図るべきだ。
 プルサーマル発電で使用されたプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料が、四国電力伊方原発と関西電力高浜原発で原子炉から取り出された。
 安倍晋三政権は原発再稼働を目指し、核燃料を繰り返し使う「核燃料サイクル政策」を掲げている。両原発のプルサーマルは2010年に始まり、最初に入れたものが今回使用済みとなった。
 使用済みMOX燃料も再利用する構想だが、国内に再処理できる施設はない。当面は原発内のプールで冷やしながら長期保管するしかない状況である。
 政府や電力会社は今後もプルサーマルを進める方針だ。行き場のない危険な核廃棄物が増え続けることになる。
 そもそもプルサーマル自体が、核燃料サイクルの行き詰まりによる窮余の策といった面が強い。
 本来はウランを燃やした後にプルトニウムを取り出し、高速増殖炉で再利用する計画だった。しかし、研究段階の高速増殖原型炉もんじゅ(福井県)はトラブル続きで16年に廃炉が決まった。
 プルトニウムは核兵器にも転用可能で、テロリストや核開発国に狙われる恐れもある。
 日本は余剰プルトニウムを持たないという国際公約によって再処理技術の商業利用が認められてきた。大量保有に世界の目が厳しくなるのは当然だ。
 このため政府は、プルトニウムをプルサーマルで消費して減らしたい考えだ。
 現在は計4基でプルサーマルを実施している。「サイクルが回っている」という形を維持するため、頼っているにすぎない。
 仮に使用済みMOXを再処理しても一般の原発では燃えにくい燃料となり、資源の節約効果は小さいと指摘されている。
 17年末時点で電力各社は、核分裂性プルトニウムを計約28トン所有し、一部はMOX燃料に加工済みという。
 核燃料サイクルは事実上破綻している。使用済み燃料の扱いや再処理、高速炉開発、放射性廃棄物の処分など解決が難しい問題ばかりで、八方ふさがりの状態だ。
 積み上がるのは「核のごみ」だけではない。巨額のコストがかかっており、電気料金にはねかえってくることも看過できない。
 これ以上政策に固執し続け、問題を先送りすることは許されないはずだ。
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