[2016_12_22_03]もんじゅ廃炉 放射性物質含むナトリウム抜き取り 国内初の課題山積 県内事業所、影響否定 六ヶ所村長は「大変残念」(東奥日報2016年12月22日)
 
 原子炉の冷却に水ではなくてナトリウムを使う高速増殖原型炉もんじゅ(福井県)の廃炉は、ナトリウムの抜き取りなど国内で初めてとなる課題が山積している。費用も一般の原発より高く、30年間で少なくとも3750億円かかると試算されているが、政府は廃炉費用を積み立てておらず、廃炉作業を担う運営主体の日本原子力研究開発機構の予算に毎年計上していく。

 原子力機構によると、ナトリウムを用いる世界各国の高速炉で廃炉作業に移行したものは、2009年に運転停止したフランスの原型炉「フェニックス」や1998年に廃炉が決まった実証炉「スーパーフェニックス」など計3基。日本ではもんじゅの前身となる高速実験炉「常陽」(茨城県)が07年に運転停止したが、政府は再稼働させるとしており、国内で廃炉経験はない。
 文部科学省によると、使用済み核燃料の取り出しには18年に着手、5年半かかる。原子炉には、ウランとプルトニウムを洩ぜた混合酸化物(MOX)燃料が198体入っている。不透明なナトリウムで満たされた炉心から遠隔換作で取り出し、もんじゅ構内で保管する。将来は、再処理のために福井県外に搬出する。
 もんじゅで使用するナトリウム約1670トンのうち、炉心などを循環する1次冷却系約760トンは放射性物質を含んでいる。抜き取ったナトリウムを保管する容器は新設する。ナトリウムは空気中の水分と反応すると激しく燃えて有害な煙を出す。1995年には、配管から放射性物質を含んでいないナトリウムが640キロ程度漏れ出し、14年半運転停止するトラブルがあった。
 施設の解体が終わるのは47年ごろだ。文科省幹部は「もんじゅの廃炉は一般の原発より時間がかかる。技術的なめどはあるが、難しいことは難しい」と話す。

 県内事業者、影響否定 六ケ所村長は「大変残念」

 政府が21日に高速増殖原型炉もんじゅ(福井県)の廃炉を正式決定したことに対し、県内の核燃料サイクル事業者は使用済み核燃料の再処理事業への影響を否定し、引き続き再処理を推進する姿勢を示した。六ヶ所村の戸田衛村長は「再処理工場を抱える村として、国の核燃料サイクル計画が見直しになったものと考えており大変残念。今後、再処理工場の操業に影響が出ないか懸念している」と語った。
 再処理の事業主体となる認可法人・使用済燃料再処理機構の井上茂理事長は、再処理で取り出したプルトニウムを有効活用する国の基本方針に変わりはないとした上で「(プルトニウム燃料を一般原発で燃やす)プルサーマル発電が進めば、これまでと変わりなく再処理に取り組める」と強調した。
 機構から業務委託を受ける日本原燃の工藤健二社長は「私どもが目指しているのは(プルサーマル発電による)軽水炉サイクルで、しっかりやっていけると思う」と、影響を否定した。
 一方、市民団体「核燃サイクル阻止1万人訴訟原告団」(代表・浅石紘爾弁護士)は同日、国や再処理機構、原燃に対し再処理工場の廃止を求める要請文を提出した。同原告団は「再処理工場には運転の必要性・経済性がない。高速炉開発の推進は、もんじゅの誤りの愚を繰り返すことになる」と指摘した。
 (阿部泰起、加藤景子)
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