[2016_11_07_06]もんじゅについてお答えします_3.「もんじゅ」の安全性(日本原子力研究開発機構2016年11月7日)
 
参照元
もんじゅについてお答えします_3.「もんじゅ」の安全性



参照元

3.1 安全性総点検で摘出された指摘事項に対する原子力機構の改善等

1.設備改善
 ナトリウム漏えい事故において、温度計の設計の問題、早期発見と確実な拡大防止、事故の影響緩和に係る問題が顕在化したことから、「ナトリウム漏えいの早期検知」、「ナトリウム漏えい量の抑制」、「ナトリウム漏えいの影響緩和」の観点からナトリウム漏えい対策の設備改善を行いました。

2.品質保証体系・活動の改善
 原子力施設の安全確保には、設備の設計、製作、施工及び運転の各段階における品質保証が重要となることから、「ナトリウム漏えい事故」当時は他の職との兼務者で構成していた品質保証体制を改め、品質保証活動を確実に実施するため、品質保証活動の推進を専任する旧・品質保証課(現・安全品質管理室)を設置しました。

3.運転手順書、運転管理体制等の改善
 すべての運転手順書類を対象として、運転手順書類の体系化の明確化、異常時運転手順書等の改善、徴候ベース手順書の整備等を行いました。また、運転員教育・訓練の改善、運転体制等の充実強化等を行いました。

4.安全性研究等の反映
 蒸気発生器伝熱管破損対策について、必要な材料データの拡充、評価手法の検証等を行い、高温ラプチャに対する破損裕度の評価を行うとともに、蒸発器伝熱管からの水漏えい時の設備への影響緩和対策として、検出機能の強化、ブローダウン性能の強化を行うことにより、高温ラプチャに対する伝熱管破損裕度を向上しました。その他、燃料融点にかかる新知見等に基づく従来の燃料最高温度の制限値と燃料最高温度評価の妥当性確認や長寿命制御棒の実用化の目途の確認等を行いました。

5.更なる改善
 これらの安全性総点検の指摘事項について改善活動の取り組みを行っている中、平成20年3月に1次メンテナンス冷却系ナトリウム漏えい検出器の不具合発生を契機として、品質保証体制、安全文化等多岐にわたる問題点が顕在化しました。そのため、「もんじゅ」の試運転を安全に再開するべく、品質保証上等の問題点を解決するため、経営が率先し、現場と一体となり行動計画を策定し、機構の総力を挙げて改善活動に取組みました。(詳細は3.5に記載)

関連情報リンク
・安全性総点検に係る対処及び報告について(第5回報告)の提出について
(1)プレス文
(2)報告書
・高速増殖原型炉もんじゅ安全性総点検に係る対処及び報告について(第5回報告の補正)
(1)プレス文
(2)報告書
・高速増殖原型炉もんじゅ試運転再開に当たっての安全性評価の原子力安全委員会への報告等について(平成22年2月15日 原子力安全・保安院)
・高速増殖原型炉もんじゅ安全性総点検に係る確認について(平成22年2月22日 原子力安全委員会)



参照元

3.2 「もんじゅ」のナトリウム漏えい対策等の設備改善について

【ナトリウム温度計の交換】
 ナトリウム漏えい事故の原因となった温度計の流力振動による破損を防止するため、短く、段つき部のない形の温度計に交換しました。また、温度計の配置を見直し、温度計数を48本から42本に削減しました。

【ナトリウム漏えいの早期検知】
 空気雰囲気室における機器、配管の保温材の外へのナトリウム漏えいを早期かつ確実に検知する空気雰囲気セルモニタの設置等を行い、セルモニタについて、セルモニタ動作時の警報・インタロックの機能確認を行いました。

【ナトリウム漏えい量の抑制】
 ナトリウム漏えい確認後、配管・機器に保有しているナトリウムを早期に抜き取ることができるよう、ナトリウムドレン配管の追加、既設ドレン配管の大口径化等の改造を行いました。

【ナトリウム漏えいの影響緩和】
 ナトリウムエアロゾルの拡散防止、ナトリウムの燃焼抑制等の観点から換気空調設備自動停止機能の追加や窒素ガス注入設備の設置等の設備改善をそれぞれ行いました 。

【蒸発器の安全性能に係る改造】
 より一層の安全性向上の観点から、蒸発器伝熱管からの水漏えい時に、水漏えいを確実に検出できるように蒸発器カバーガス圧力計を増設し、伝熱管の水・蒸気の排水を早期に完了できるように蒸発器放出弁を増設しました。



参照元

3.3 誤警報を発報したナトリウム漏えい検出器は改善されたのか?

1.接触型ナトリウム漏えい検出器(CLD)の改善
 接触型ナトリウム漏えい検出器(CLD)の誤警報発報に対して、以下の対策を行いました。

(1)1次メンテナンス冷却系CLDの据付不良に対する改善
 誤警報の原因は、CLD (検出器)を弁に取り付ける際、CLDの挿入位置を決める固定金具(シーラント)の 取付けに対し、十分な確認をしていなかったことによりCLDが過挿入となり、電極となっている検出器先端が弁棒と接触して通電したことにより、警報発報に至ったものと推定しました。
 そのため、同型のCLDについては、挿入時に位置ズレが生じにくい止め金具(スウェージロックタイプ)に変更し、全数252個を交換しました。
 また、据付不良(過挿入)に係る水平展開の点検として、ナトリウム漏えい検出器その他のナトリウム漏えい検出器、差し込み構造を持つ計装品、同一製作施工会社の計装品等、合計で4347個に対して点検を実施し、同様な据付不良がないことを確認しました。
 その結果、漏えい検出器1個の締付けの緩みと予熱用温度計の6個の絶縁低下を確認し、それらについて増締めや取替え等の対策を実施しました。

(2)2次系オーバーフロータンクCLDのイオン・マイグレーションに対する改善
 誤警報の原因は、CLD電極部分において接着に用いた銀ロウが溶け出すイオン・マイグレーションという現象が生じ、電極部分の絶縁低下が発生したと推定しました。
 そのため、銀ロウ付けタイプのCLD91個全てをイオン・マイグレーションが起こりにくい金ロウ付けタイプのCLDに交換しました。

2.放射線イオン化式ナトリウム漏えい検出器(RID)の改善
 放射線イオン化式ナトリウム漏えい検出器(RID)における誤警報発報に対して、「2次系RIDの基板留めネジの緩みに対する改善」、「温度変化によるRID誤警報に対する改善」、「塗装揮発成分によるRID誤警報対策」を行いました。

関連情報リンク
●「もんじゅ」ナトリウム検出器誤警報関連のプレス発表文、外部公表資料
●高速増殖原型炉もんじゅナトリウム漏えい検出器の点検報告書の補正について (平成21年4月22日)

表3.3 点検個数及び点検結果のまとめ



参照元

3.4 屋外排気ダクトの腐食孔は改善されたのか?

 平成20年9月、管理区域内の換気を排気筒へ導くため原子炉補助建物の屋上に設置している、アニュラス循環排気装置のダクト(以下、「屋外排気ダクト」という。)において、腐食孔(横約2cm、縦約1cm)があることを確認しました。
 屋外排気ダクトは安全上重要な設備であり、可能な限り早期に補修を行う必要があるため、短期的な対策として、腐食部分や減肉部分の当て板補修工事を平成21年3月から5月にかけて実施しました。
 一方、長期的な対策として、屋外排気ダクトについて取替工事を行うこととし、資機材の搬入などの準備作業を平成23年2月より進め、準備が整ったことから、平成23年4月より取替工事を実施しています。取替工事にあたっては、雨水がダクトに溜まらないようにダクト上面に雨除けカバーを設けたり、ダクトと支持構造物との間に雨水が浸入しないようにコーキングを施したりするなどの対策を行ないます。

関連情報リンク
●屋外排気ダクト関連情報については、こちらから。

図3.4 屋外排気ダクト取替工事(概要図)



参照元

3.5 行動計画に基づく改善活動

【経営の現場への関与の強化】
従来は、経営の積極的な関与が十分でなく、経営と現場のコミュニケーションが十分ではなかったことから、経営が積極的に現場の状況を把握し、経営として迅速な対応・指示を出すことができる仕組みを構築し、経営と現場のコミュニケーションを充実させることにより、経営が積極的に「もんじゅ」に関わるプロジェクト管理をできるようにしました。

【業務運営の強化(所長のリーダーシップの発揮)】
従来は、保安に関する業務をもんじゅ開発部長が行っており、所長のリーダーシップが十分に発揮されなかったことから、所長は「もんじゅ」の安全を統括する者として役割を明確にし、組織としてその職責を持たせるとともに、現場での業務実施状況を迅速かつ確実に確認できる仕組みを構築しました。これにより、的確なリーダーシップによる組織的かつ迅速な課題解決が行われるようになりました。

【業務運営の強化(マネジメント機能の強化)】
従来は、もんじゅ開発部長に業務が集中し、保守管理、課題解決、外部対応など広範な課題に対して十分な対応ができなかったことから、FBR発電プラントとして運営する組織機能を強化するため、2室3部体制に見直し、マネジメント範囲の適正化、総括調整機能の強化を図りました。これにより、「もんじゅ」プロジェクトを進めていくために解決すべき課題に、組織的に一丸となって対応できるようになりました。

【品質保証体制の強化】
従来は、PDCAサイクルを回すシステムが十分に機能していなかったことから、自律的な品質保証体制を確立することを目指し、品質マネジメントシステムを見直し、継続的な改善を実施できる体制とする等、様々な改善活動に取り組みました。また、特にチェック・アンド・アクションの部分を深化させる取り組みを更に進め、品質保証体制の強化を図りました。具体的には、品質マネジメントシステム(QMS)を所員に近づける活動として保安活動に密着したQMSの見直し、自ら問題点を探して改善していく活動としてQA診断による自主的改善活動の推進を行いました。

【安全文化醸成活動及びコンプライアンス活動】
トラブルを踏まえた根本原因分析結果より抽出された、安全文化醸成にかかる課題とコンプライアンス意識に関わる課題を踏まえて、安全文化醸成活動及びコンプライアンス活動の推進の強化を図る活動を行いました。その結果、組織風土・安全文化及びコンプライアンス意識の向上が図られました。

関連情報リンク
・安全性総点検に係る対処及び報告について(第5回報告)の提出について(平成21年11月9日)
(1)プレス文
(2)報告書
・高速増殖原型炉もんじゅ安全性総点検に係る対処及び報告について(第5回報告の補正)(平成22年2月9日)
(1)プレス文
(2)報告書
・高速増殖原型炉もんじゅ試運転再開に当たっての安全性評価の原子力安全委員会への報告等について(平成22年2月15日 原子力安全・保安院)
・高速増殖原型炉もんじゅ安全性総点検に係る確認について(平成22年2月22日 原子力安全委員会)


参照元

3.6 「もんじゅ」の耐震安全性は確保されているか?

 「もんじゅ」の耐震安全性評価については、改訂された「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」に基づく評価に、活断層評価の審議及び新潟県中越沖地震の知見等も反映して基準地震動を見直しました。その結果、基準地震動を600ガル(水平方向最大加速度)から760ガルに引き上げ、これに基づき、原子炉建物、安全上重要な機能を有する施設、ナトリウムを内包する主要な設備等の耐震安全性評価の対象とすべき全施設の評価を実施し、耐震安全性が確保されていることを確認しました。
 これらの評価結果を取りまとめ、平成22年2月に原子力安全・保安院に報告し、3月に原子力安全・保安院において当該報告に対する評価結果がまとめられました。また、同じく3月に原子力安全・保安院の評価結果について、原子力安全委員会で妥当との確認が行われました。

情報関連リンク
●耐震関連のプレス発表文、外部公表資料
●高速増殖原型炉もんじゅ「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」の改訂に伴う耐震安全性評価結果報告書の提出について(平成20年3月31日)
●高速増殖原型炉もんじゅ「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」の改訂に伴う耐震安全性評価結果報告書(改訂版)の提出について(平成22年2月2日)
●高速増殖原型炉もんじゅ「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」の改訂に伴う耐震安全性評価結果報告書 改訂(補正)について(お知らせ)(平成22年3月12日)
●耐震設計審査指針の改訂に伴う高速増殖原型炉もんじゅの耐震安全性に係る評価について(平成22年3月15日 原子力安全・保安院)

参考情報
●最近の「もんじゅ」における地震観測記録

図3.6 「もんじゅ」の耐震安全性評価について



参照元

3.7 試運転再開後に想定される事故は何か?対策はできているか

「もんじゅ」の運転時に発生が予想される事故・トラブル等に対しては、設計において講じてきた事前の防止策により発生する可能性を低くするとともに、万一発生した場合にも、「止める」「冷やす」「閉じ込める」という安全対策を講じることにより、外部に影響を与えるような事故の発生は無いと考えています。
 しかしながら、多くの機器や設備があるため、リスク管理の観点から機器の故障等が発生することを想定しています。
 試運転再開後、どのような事故・トラブルの発生が想定されるか、それに対してどのような防止策を取っているか、発生した場合どのように対応するのかなどを事前に検討しておくことは、従業員の安全意識の高揚にもつながり、重要なことと考えています。
 そのため、「人は誤り、機械は故障する」ことを前提に、「もんじゅ」の運転において、発生するかもしれない事故・トラブル等の事例及びそれらへの対応方法を事例集として取りまとめました。
 性能試験・運転中に考えられる事故・トラブル等についても、この中にまとめています。例えば、性能試験を実施中、操作ミスにより原子炉自動停止信号を発生させてしまい、原子炉が停止する事例など、138の事例を選定しています。

情報関連リンク
●事故・トラブル等の事例集(運転編)紹介リーフレット
●運転等において想定される事故・トラブル等の事例とその対応
●運転等において想定される事故・トラブル等の事例とその対応【追補版】

KEY_WORD:MONJU_:CHUETSUOKI_: