[2023_07_27_05]高速炉「常陽」審査合格 茨城・大洗の原子力機構 25年再稼働目指す(茨城新聞2023年7月27日)
 
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高速炉「常陽」審査合格 茨城・大洗の原子力機構 25年再稼働目指す

 原子力規制委員会は26日、日本原子力研究開発機構の高速実験炉「常陽」(茨城県大洗町)の安全対策が新規制基準に適合しているとする「審査書」を決定し、正式に審査合格とした。機構は2025年3月の再稼働を目指す。運転再開には安全対策工事が必要で、工事に対する茨城県と大洗町の「事前了解」が今後の焦点となる。
 規制委では意見公募の結果などが報告され、委員長を含む5人の委員全員が審査書に賛成した。一方、運転停止の原因となった07年の実験装置トラブルで原子炉容器内に脱落したとみられる部品の影響について、伴信彦委員が審査書で触れるべきと指摘。規制委は今後の検査などで確認することにした。
 山中伸介委員長は、会見で「ナトリウム冷却材の火災や再臨界を慎重に審査を進めた。(安全対策では)ケーブル類の劣化、火災防護が重要だ」と述べた。
 常陽の運転再開に向けては、機構は今後、詳細設計をまとめた工事計画と運用ルールに当たる保安規定の認可を規制委から受ける必要がある。
 常陽は国内唯一の高速炉で発電設備はない。廃炉になった高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の前段階に位置付けられる研究施設。1977年に運転を開始したが、実験装置のトラブルで2007年から運転を停止している。
 使用済み燃料から取り出したプルトニウムとウランを混ぜた「MOX燃料」を使用。冷却材は燃えやすい性質のナトリウムを使う。機構は運転再開後、停滞する高速炉開発や、高速中性子を利用した医療用の放射性同位体の製造に活用する方針を示している。
 再稼働に向け、機構は格納容器の破損を防ぐ断熱材の設置や、中央制御室外への原子炉停止盤の新設、炉心や制御棒などの安全対策工事を予定する。着工には原子力安全協定に基づき、県と大洗町の「事前了解」が必要となる。
 機構の担当者は県庁での会見で、県との今後の調整を前提とした上で、本年度内に事前了解を得られれば目標とする25年3月の運転再開に間に合うとの見方を示した。着工については「当然、事前了解後の着手になる」とし、来年度になるとした。
 事前了解を巡っては、県は原子力施設の安全性を検証する「県原子力安全対策委員会」と、原子力政策を審議する「県原子力審議会」の2機関で独自に安全性を審議し、隣接市町村の意見聴取をした上で、判断する方針を示している。
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