[2021_01_06_04]無料視察参加「関心団体」に 経産省核ごみ最終処分事業 三笠市商工会、削除要求(北海道新聞2021年1月6日)
 
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無料視察参加「関心団体」に 経産省核ごみ最終処分事業 三笠市商工会、削除要求

【三笠】原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分事業を巡り、三笠市商工会が、原子力発電環境整備機構(NUMO)が実施した道外の核燃料関連施設の視察宿泊旅行に職員を派遣したところ、NUMOを所管する経済産業省資源エネルギー庁から無断で、処分事業に関心がある団体(関心グループ)に位置付けられ、撤回を求めるトラブルが起きていたことが分かった。視察費用はNUMOが全額負担しており、専門家は「地域の関心をカネで買うようなやり方で不適切だ」と指摘する。

■依然HP公表

 道内では昨年11月、核のごみの最終処分場選定に向けた「文献調査」が後志管内寿都町と神恵内村で始まった。経産省はこれに先立つ2019年11月、複数の地域での文献調査実施に向け、処分事業に関する情報発信や施設見学などに主体的に取り組む団体を「関心グループ」に位置付け、20年をめどに100程度まで増やす方針を決定した。エネ庁のホームページ(HP)では、三笠市商工会を含む81団体が関心グループとして公表されている。
 三笠市商工会によると、NUMOの視察旅行は19年春ごろ、大手電力10社でつくる電気事業連合会を通じて誘いがあり、同年10月24、25日に職員5人を茨城県東海村に派遣。職員は処分事業に関する講義を受け、日本原子力研究開発機構の核燃料サイクル工学研究所を見学した。航空運賃や宿泊費のほか、新千歳空港までの往復のタクシー代もNUMOが負担した。

■誘致意図なく

 NUMOは費用の詳細は「非公表」とするが、処分事業に関する勉強会や施設見学を行う団体に15年度から最大100万円を支援する事業を続けており、三笠市商工会の視察もこの一環として実施された。職員派遣を決めた商工会の松本哲宜・前事務局長(66)は「費用が出ると知り、道外視察のいい機会だと思った。文献調査を誘致する意図はなかった」と話す。
 エネ庁は20年6月、三笠市商工会を「関心グループ」としてHPで発表。NUMOは事前に連絡したとしているが、商工会側は「報道機関からの問い合わせで知った」と説明。視察に参加した場合、関心グループに位置付けられる可能性があることについても「事前にはっきりと説明された記憶がない」としている。商工会は「処分場誘致に前向きだと誤解されたら地元に迷惑がかかる」として同月、商工会職員の視察旅行のリポートをHPに掲載していたNUMO関連団体に削除を求めた。
 その後、商工会職員のリポートは削除された。ただ商工会の名前が記載されたエネ庁の関心グループの一覧表は「次の更新時期に対応する」(NUMO)として現在も公開されたままだ。昨年9月に寿都町と神恵内村で開かれた住民説明会でも三笠市商工会の名前が入った資料が配布された。

■手法を疑問視

 NUMO広報部は「関心グループ事業はあくまで処分事業に理解を深めるためで、文献調査に直結しない」と説明。エネ庁は「関心グループの事業はNUMOの担当で、三笠市の件は把握していない」(放射性廃棄物対策課)としている。
 原子力政策に詳しい福島大の清水修二名誉教授(財政学)は「潤沢な予算をちらつかせるやり方は、交付金で財政難の自治体に文献調査を受け入れさせた構図と同じで適切ではない。核のごみの処分の問題はもっとオープンな形で検討するべきだ」と指摘する。(金子文太郎)
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