[2016_12_20_01]もんじゅ廃炉費3750億円超 負の遺産、国民にツケ(東京新聞2016年12月20日)
 
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もんじゅ廃炉費3750億円超 負の遺産、国民にツケ

 政府は十九日、高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)を廃炉にする一方、新たな高速炉を開発する方針を固めた。福島第一原発の事故処理費用も、ほとんどを国民の電気料金で賄うことが固まったばかり。一兆円超の国費をかけてきたもんじゅ失敗の反省もないまま、原子力政策維持のための国民負担が膨らみ続けることになる。 (吉田通夫)
 もんじゅを廃炉にする方針は文部科学省で開かれた「もんじゅ関連協議会」で、松野博一文科相が福井県の西川一誠知事に伝えた。西川氏は「もんじゅの総括が不十分だ」などと反発し、政府は再び説明する場を設けると約束。しかし、年内に関係閣僚会合で廃炉にすることを正式に決める方針に変わりはない。
 もんじゅは三十六年間で一兆四百十億円の国費を投じたにもかかわらず、トラブル続きでほとんど稼働していない。大量の機器で点検漏れも発覚し、原子力規制委員会は運営主体を現行の「日本原子力研究開発機構(原子力機構)」から変更するよう求めたが、見つからなかった。
 文科省は廃炉には三十年で三千七百五十億円以上かかると試算。存続を求める福井県と敦賀市に配慮し、もんじゅと周辺地域を高速炉など原子力の研究開発拠点と位置付け、もんじゅ内に新たな試験炉を設置する方針もまとめた。
 一方、政府は官民会議「高速炉開発会議」も開き、もんじゅに代わる新しい高速炉の開発に着手する方針を確認した。もんじゅで得る予定だったデータは、仏政府が計画する高速炉「ASTRID(アストリッド)」に資金を拠出して共同研究に参画したり、もんじゅの前段階の研究に使われた実験炉「常陽」(茨城県、停止中)を活用することで得られると結論づけた。
 しかし、アストリッドは設計段階で、日本の負担額は分からない。常陽も、福島第一原発の事故を受けた新しい規制基準に合わせて耐震などの工事をしており、費用は不明。さらに、新たに高速炉を建設する場合、構造が複雑なため建設費が通常の原発より数倍は高いとみられている。これから投じられる国費の規模は、めどすら立っていない。
 原子力政策をめぐっては、福島第一原発の廃炉などの処理費用が従来予想から倍増して二十一兆五千億円かかる見通しとなり、政府はほとんどを国民の電気料金や税金でまかなう構え。福島第一を除く原発の廃炉費用の一部も電気料金に上乗せする方針で、国民の負担が増え続けている。

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