[2024_03_17_03][誰のための原発か]行き場のない民意編<1>―熱意<上>再稼働の判断にどう関われるのか、「理解」の中身も見えず_東京電力柏崎刈羽原発の新潟から問う(新潟日報2024年3月17日)
 
参照元
[誰のための原発か]行き場のない民意編<1>―熱意<上>再稼働の判断にどう関われるのか、「理解」の中身も見えず_東京電力柏崎刈羽原発の新潟から問う

 06:00
 東京電力柏崎刈羽原発の再稼働を巡り、新潟県内では今後「地元同意」が焦点となる。立地自治体の首長が判断を示すのが一般的だが、「地元」の範囲や住民の意見集約の方法に法的な定めはない。とりわけ立地地域でない県民の思いがどう考慮されるのかは不明瞭だ。長期企画「誰のための原発か 新潟から問う」の今シリーズでは、住民投票の試みや地方議会、首長の言動などを通して「行き場のない民意」について考える。(5回続きの1、「熱意」の上)=敬称略=

 シリーズの一覧を見る

 新年の平穏な雰囲気は、突然の大きな揺れで一変した。2024年1月1日夕に発生した能登半島地震。東京電力柏崎刈羽原発のある柏崎市には、新潟県内の他の沿岸部と同様に津波警報が発表された。高台に避難しようとする自家用車で、柏崎市内の道路は一部で混雑した。
 「原子炉建屋は大丈夫だろうか」。柏崎市鯨波の浅賀千穂(74)は娘の暮らす神奈川県で正月を迎えたが、地震の一報に、まず柏崎刈羽原発のことが脳裏をかすめた。

 柏崎刈羽原発の安全性について議論する「原発の透明性を確保する地域の会」メンバーだった浅賀。2007年の中越沖地震の後に原発の構内を視察し、液状化現象により砂が吹き出した現場を実際に見た。今回の被害が気になった。
 東電によると、能登半島地震後の柏崎刈羽原発では、2〜4号機と6、7号機で、使用済み燃料を冷やしているプールから放射性物質を含む水があふれた。外部への放射能の影響はなく、原発の運営に影響を与えるような設備の損傷や液状化被害は確認されていない。
 しかし、不安は収まらない。地震から1カ月弱の1月30日。浅賀は、東電が柏崎市産業文化会館で開いた住民説明会に足を運んだ。
 「能登半島地震の新たな知見が明らかになるまで、再稼働への動きは凍結するべきだ」。東電幹部らが並ぶステージに向かい、会場前方の席を埋めた市民らが声を上げた。浅賀も手を挙げ、説明会の目的をただして言った。「これで住民の理解を得たということにはしないでもらいたい」

 2023年末に柏崎刈羽原発の事実上の運転禁止命令を解除された東電。その再稼働について、「地元の理解」を重視するとしてきた。東電ホールディングス社長の小早川智明(60)も「地元からの理解が大前提」だと度々発言している。
 ただ、東電が自分たちの不安をどう解消し、何をもって「理解」とするつもりなのか、浅賀には分からない。
 能登半島地震を受け、柏崎刈羽原発の安全性や重大事故時の避難の実効性について、改めて懸念する声が高まっている。それは立地地域に限らない。

 新潟県民として、再稼働について声を上げたいと望む人々がいる。主婦や農家ら有志が熱意を傾け、意思表示の手法の一つである住民投票の実現を目指す動きが、かつてあった。
KEY_WORD:能登2024-柏崎刈羽_:CHUETSUOKI_:KASHIWA_:NOTOHANTO-2024_: