[2024_03_22_02]「国民をなめている」 信もない、出口もない ツケだらけの国策(毎日新聞2024年3月22日)
 
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「国民をなめている」 信もない、出口もない ツケだらけの国策

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 信頼――。2月13日に開かれた東京電力ホールディングス(HD)取締役会の諮問機関「原子力改革監視委員会」の会合で、委員から繰り返し出た言葉だ。リスクコミュニケーションに詳しい西澤真理子委員(リテラジャパン代表)は「安全性を向上させて信頼を得ることと、それを動かす人や組織に対する信頼は違う。まさに東電はそこの状況にいる」と述べ、組織・東電としての信頼の重要性を指摘した。
 デール・クライン委員長(元米原子力規制委員会委員長)も「まずはミスを犯さないことと、何かがあったときに迅速に情報発信することだ。信頼というのは勝ち取るのは難しいが、失うのは一瞬だ。東電は常に信頼を醸成する取り組みを続けなければならない」とクギを刺した。東電も「今年は当社への信頼がこれまで以上に大切な年になる」(東電HD会長の小林喜光委員)と呼応した。

 説明会 全国で820回

 福島第1原発事故以降の13年間は、国・東電にとって原発の安全対策の強化とともに、どう信頼回復を図るかの歩みでもあった。原子力白書によると、資源エネルギー庁は2016年以降、シンポジウムや説明会などで原子力を含めたエネルギー政策に関する説明を全国で820回以上実施してきた。また、東電は柏崎刈羽原発でテロ対策の不備が発覚した21年以降、新潟県内の交流拠点やイベント会場などに「コミュニケーションブース」を開設し、県民らから直接意見を聞き、説明をする機会を作っている。
 それでも信頼は回復できていない。昨年10月には福島第1原発の配管洗浄中に作業員が放射性物質を含む廃液を浴びた事故が発生。今年2月7日には放射性物質を除去する装置がある建屋から推計約1・5トンの汚染水が漏えいした。
 「大丈夫」。関係者によると、東電社内には当初、汚染水漏えいを矮小(わいしょう)化する向きもあったという。だが、「漏えいした汚染水自体は非常に危険。人が近くにいなかったから最悪の事態にはならなかっただけ」(東電幹部)との声もある。
 こうしたこともあり、東電の小早川智明社長は2月21日、斎藤健経済産業相から再発防止の徹底を指導された直後に報道陣の前に現れ、「設備改善も含めて、しっかりと進めながら、しっかりと福島への責任を果たしたい」と述べた。経産省側は当初、報道陣への対応は必須ではないとしたが「逃げるようなイメージはよくない」(東電関係者)と判断した。

 後世にいかにツケを残さないか

 発電所の立地地域だけでなく、広く社会からの信頼を獲得できないでいるのも原子力の特徴だ。「信頼に必要なのは、後世にいかにツケを残さないかということだ。核燃料サイクルや最終処分場選定地の問題解決が必要だ」。霞が関で原子力政策に関わった経験のある現役官僚はこう指摘する。(後略)
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