[2024_03_08_01]【伊方原発訴訟】原発、災害対策不安なお 争点外の住民避難も課題(静岡新聞2024年3月8日)
 
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【伊方原発訴訟】原発、災害対策不安なお 争点外の住民避難も課題

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 運転差し止め訴訟が各地の住民から相次ぐ四国電力の伊方原発(愛媛県伊方町)に対し、大分地裁は7日の判決で災害対策に一定のお墨付きを与えた。ただ、半島の付け根という立地は、能登半島地震でも課題となった避難や救難の難しさが想定され、過酷事故への不安を残す。有識者からは、争点外だった住民避難計画の不備を指摘する声も出ている。

 ▽合理性

 「われわれの主張は一部取り入れられたが、結論に影響しなかった」。判決直後に開かれた報告集会で、原告代理人の徳田靖之弁護士は憤った。
 各地の原発差し止め裁判に関わっている「脱原発弁護団全国連絡会」によると、原発に関わる現在係争中の裁判は30件超。このうち大分地裁で提起された同種訴訟は広島、松山両地裁と山口地裁岩国支部でも係争中だ。
 今回の大分地裁判決は専門的な知見を持つ電力事業者が原発の安全性に関して、立証する必要があるとの判断を示し、原告側の訴えを一部取り入れた。一方、噴火で火山灰が降っても、原発に致命的な影響を与えないとの四国電の主張は「保守的に設定されたもので、合理的」と認めるなど安全対策は評価した。

 ▽寸断

 愛媛、大分両県によると、地震などで伊方原発が緊急事態に陥った場合、半径約30キロ圏内の約11万人は避難や防護措置を余儀なくされる。
 だが、1月の能登半島地震では北陸電力志賀原発(石川県志賀町)の重大事故時の避難ルートに定めた道路の多くが土砂崩れで寸断された。政府は「今回の被災状況を検証しつつ、地元の声をしっかり聞いて取りまとめる」(岸田文雄首相)方針だ。
 対岸にある大分県にフェリーで住民を運ぶなどする計画もあるが、東京電機大の寿楽浩太教授(科学技術社会学)は海底がせり上がり、本来利用する予定だった港が利用できなくなる可能性があると指摘。「避難計画の見直しや、設備の強化を試みるべきだ」とした。

 ▽続く闘争

 地震に関しても、伊方原発の敷地から約1〜2キロに活断層があるかどうかの調査が不十分なため、地下構造を精密に調べる「3次元探査」が必要だとする原告側の主張を退けた。四国電の講じてきた対策が有効と判断した格好だ。
 これに対し、2014年に福井地裁で裁判長として関西電力大飯原発3、4号機(福井県)の再稼働を認めない判決を出した樋口英明さんは、そもそも伊方原発の耐震設計の目安となる基準地震動「650ガル」が過小評価だと指摘。「現在の規制基準の枠組み自体がおかしい」とも批判した。
 東日本大震災以降、原発の安全性に対する視線は厳しくなっており、市民の関心は高い。徳田弁護士は集会の締めくくりに、控訴後も「原発を絶対に止めるという意志を示していきたい」と、声に力を込めた。
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