[2026_01_30_06]「初期トラブル」ではない柏崎刈羽停止 30年放置された制御棒欠陥と規制の見逃し 山中規制委員長の発言が揺るがす規制の独立性と責任 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ2026年1月30日)
 
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「初期トラブル」ではない柏崎刈羽停止 30年放置された制御棒欠陥と規制の見逃し 山中規制委員長の発言が揺るがす規制の独立性と責任 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

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 山中伸介原子力規制委員会委員長は1月28日の定例記者会見で、再稼働直後に停止した東電柏崎刈羽原発6号機について、「あくまでも初期トラブルの一つだ」と述べ、安全に重大な影響はないとの認識を示した。(時事通信1月28日)

◎山中規制委員長の「初期トラブル」発言は、単なる言葉の問題ではない。
 これは、事実認識の誤りであり、技術的理解の欠如であり、そして何より、規制当局トップとしての責任感の欠如を露呈する発言だと言わざるを得ない。

◎今回の柏崎刈羽6号機の停止は、「初期」でも「偶発」でもない。
 制御棒駆動系に関わる警報のほかにも、1996年の運転開始以来、約30年にわたって是正されてこなかった設定・管理上の欠陥があった。
 これは、新設設備にありがちな「初期不良」などではなく、長年にわたり事業者と規制の双方が見逃し続けてきた構造的かつ組織的な欠陥の露呈である。
 「使い始めに起こりがちな一過性の不具合」を想起させる「初期トラブル」という表現は、事実関係と明確に整合しない。

◎しかも制御棒は原子炉の核分裂反応を制御し、異常時には即座に停止させる機能を有する安全系の重要設備である。
 制御棒の異常は、過去の志賀原発1号機の臨界事故や米国SL−1事故(注)が示すように、臨界事故・反応度事故に直結し得る性質のものだ。
 本来であれば、最も慎重な言葉で扱うべき領域に対し、規制委員長自らが「初期トラブルの一つ」と矮小化することは、事業者に問題の深刻さを軽く見せ、社会に対しても不当に安心感を与える危険なメッセージとなる。

◎さらに、「安全に重大な影響はない」と断定した点も看過できない。
 警報が作動し、想定外の事象が起きたからこその停止であり、これは安全機能の理解と管理が不十分だった可能性を示す「警報」である。
 「結果として大事故に至らなかった」ことと「安全に重大な影響がなかった」ことは同義ではない。
 長期間の設定ミスや管理不全が放置され、そのうえ規制審査を経て再稼働が認められていたという事実を踏まえれば、安全確保の前提そのものが揺らいでいた疑いすらある。
 その段階で「重大な影響はない」と言い切る姿勢は、自らの規制判断を先に守ろうとする自己弁護と正当化だと受け取る。

◎同じ会見で、浜岡原発の地震想定データ不正については「洗いざらい出すよう指示」「誠実に応えてほしい」と比較的厳しいトーンを示しながら、柏崎刈羽については「初期トラブル」と評価を和らげる。
 この対比は、同じく「安全文化の欠如」に根ざす問題でありながら、事業者や状況によって評価のトーンを変えているのではないかという疑念を生む。
 規制の独立性・一貫性に関わる重大な問題だ。

◎規制委員長の言葉は、個人のコメントではなく、規制行政の姿勢そのものを体現する。
 だからこそ、「想定内」や「初期トラブル」といった事業者寄りに聞こえる表現は、最も避けるべきだ。
 必要なのは、なぜ30年近く見逃されてきたのか、なぜ規制審査で是正されなかったのか、なぜ再稼働判断に影響しなかったのかを徹底的に検証する姿勢であり、問題を軽く包み込むレトリックではない。

◎柏崎刈羽6号機の停止事象を「初期トラブルの一つ」と片づけた山中委員長の発言は、事実に反し、技術的に不正確であり、規制行政のトップとして不適切である。
 再稼働を前提とした安心の言葉ではなく、規制の失敗も含めて厳しく問い直す言葉こそが、今、求められている。

注:SL-1(Stationary Low-Power Reactor Number One)事故。
 米国の軍事用試験炉で原子炉停止中、運転員が誤って制御棒を引き抜いたために反応度が急激に添加され、原子炉が暴走状態になった。
                    (「ATOMICA」より)
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