[2026_01_07_10]〈社説〉原発データ不正 何が現場を焦らせたか(東京新聞2026年1月7日)
 
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〈社説〉原発データ不正 何が現場を焦らせたか

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 「安全より速さ」の意識が広がっていたと言われても致し方あるまい。中部電力が浜岡原発(静岡県御前崎市)の再稼働に向けた原子力規制委員会の審査対象となるデータで、地震の揺れの最大想定(基準地震動)を過小に見せる操作をしていた疑いが発覚した。

 ◆説明とは違う方法でデータを不正に操作

 担当者は社内調査に「時間的制約があった」「揺れを小さく見せたかった」などと話しているといい再稼働を急ぐ社内の空気が現場を焦らせ不正につながった可能性がある。原発事業者としての適格性が問われる極めて深刻な事態だ。
 全5基の浜岡原発は南海トラフ地震の想定震源域にあり、東海道新幹線や東名高速道路など日本の東西を結ぶ大動脈に近い。ひとたび事故が起きれば国全体に甚大な影響が及び、福島第1原発事故直後の2011年、当時の菅直人首相の要請で稼働中の全基が運転を停止した経緯がある。現在は1、2号機で廃炉が進んでおり、中部電力が再稼働を目指す3基のうち3、4号機は規制委の審査中だった。
 中部電力によると、基準地震動の策定にあたり、条件の異なる20通りの揺れのパターンから平均値に最も近いものを代表波として採用すると規制委に説明していたが、実際には中部電力にとって都合の良い揺れの波が代表波となるよう、説明とは異なる方法でデータを不正に操作していたとされる。

 ◆「工期順守のプレッシャーなどが原因」か

 基準地震動は原子炉建屋などの耐震設計の基準となり、審査の最重要項目とされる。深刻なのは、その大前提となるデータが恣意的にゆがめられていたのに、規制委が2023年、中部電力の示した基準地震動に「おおむね妥当」との評価を出していたことだ。虚偽を見抜けなかったことになり、福島事故後の新規制基準に基づくチェック体制の信頼性が根底から揺らぐ。
 同社では昨年11月にも、原子力部門が社内規定に反して浜岡原発の安全対策工事の仕様変更を発注し、数十億円規模の未精算が発生したことが発覚、副社長らが引責辞任した。中部電力の中間報告は、工期順守のプレッシャーなどが原因と指摘している。今回の件も同じような構図とすれば、企業風土の問題とみることもできよう。
 上層部の再稼働を急ぐ方針が圧力となっていなかったか、安全がないがしろにされることがないよう、現場への指示などで十分配慮されていたか。その点も今後の調査でつまびらかにされるべきだ。
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