[2019_12_02_02]福島第一廃炉工程表案 デブリ除去2号機から 明記(東京新聞2019年12月2日)
 
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福島第一廃炉工程表案 デブリ除去2号機から 明記

 政府は二日、東京電力福島第一原発の廃炉・汚染水対策チームの会合で、廃炉に向けた工程表「中長期ロードマップ」の改定案を示し、廃炉作業の最難関とされる溶融核燃料(デブリ)の取り出しを、2号機から二〇二一年中に始める方針を正式に明記した。三一年までに1〜6号機全基で、使用済み核燃料プールに残る燃料計四千七百四十一体の搬出完了を目指すことも盛り込んだ。
 改定は五回目。事故から三十〜四十年後とする廃炉完了目標は維持した。今後、各工程を精査して正式決定する。プール燃料全ての搬出完了時期を設定するのは初めてだが、これまでトラブルなどで作業の中断、遅れが相次いでおり、デブリ取り出しも含め順調に進むかどうかは不透明だ。
 会合で、チーム長を務める梶山弘志経済産業相は「復興と廃炉の両立を大原則に対策を進める」とあいさつした。
 2号機のデブリの本格的な取り出しを前に、性質や状態を調べるため本年度内に少量を試験採取するとしていたが、今回の工程表改定で、二一年に予定する取り出し開始に合わせて実施すると変更。その後は三一年までに取り出す規模を拡大していくとの目標を掲げた。
 使用済み核燃料は強い放射線を出し、冷却し続けなければ高温になり溶融する恐れがある。各号機の原子炉建屋内で未使用燃料も含めプールに沈めて保管しており、搬出した燃料は構内の共用プールに移し安定的に保管するが、最終処分先は未定となっている。
 事故当時に定期検査中だった4号機は全てプールからの取り出しを完了。炉心溶融を起こした3号機でも今年四月、搬出が始まった。1、2号機の搬出開始はいずれも二三年度をめどにしている。

◆放射線…目立つ搬出遅れ

 東京電力福島第一原発の「中長期ロードマップ(廃炉工程表)」の改定案は、事故から三十〜四十年後の廃炉完了目標を維持したほか、二〇三一年までに全ての使用済み核燃料を原子炉建屋のプールから搬出する新たな期限を設けた。搬出は既に3号機で始まっているものの、放射線やがれきが障害となっているほか、トラブルなどで中断や遅れが目立つ。
 燃料搬出は4号機が一四年に完了。しかし炉心溶融が起きた1〜3号機は放射線量が高く、水素爆発によるがれきにも阻まれて難航している。3号機での搬出作業が四年遅れで今年四月に始まったが、機材トラブルなどが相次いでたびたび中断している。
 搬出準備をしている1号機では、想定以上に多くのがれきが残っていることなどが判明。ほこりの飛散などを抑える新たな大型カバーの設置案が検討され、作業開始はさらに遅れる可能性が出ている。
 改定案では、本年度予定していたデブリの試験採取が先送りになった。政府の担当者は「目標である二一年からの取り出しを確実にするための見直しだ」と強調するが、デブリの全貌は把握できておらず、放射性物質の飛散を防ぐ仕組みの具体化など課題が残る。

<中長期ロードマップ> 東京電力福島第一原発の廃炉に向け、溶融核燃料(デブリ)や、使用済み核燃料プールに残る燃料の搬出スケジュールなどを示した工程表。2011年12月に政府と東電が策定し、作業状況などを反映して適宜、改定している。プールからの燃料搬出開始(13年11月)までを第1期、21年中を目標とするデブリ搬出開始までを第2期、41〜51年が目標の廃炉完了までを第3期と位置付ける。

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