[2019_11_16_03]“原発大国”フランスで想定外の地震|16年ぶりのマグニチュード5.4で広がる住民の不安(クーリエ・ジャポン2019年11月16日)
 
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“原発大国”フランスで想定外の地震|16年ぶりのマグニチュード5.4で広がる住民の不安

 11月11日、フランス南部でマグニチュード5.4の地震が発生した。もともと大きな地震が少なく、石造りの家も残るフランスでは、家屋の損壊などの被害が出ている。ただ、それより不安のもとになっているのが「原発」だ。
 フランスは国内19ヵ所に58基の原子力発電所を擁し、生産電力の71.6%(2017年)を原子力でまかなう原発大国でもある。地震が起きた地域にも原発があり、住民の間に不安が広がっている。

フランスにとっては16年ぶりの「大地震」

 11月11日の地震は、北は中東部の都市リヨンから南は地中海にほど近いモンペリエまで広範囲にわたって観測された。翌12日の「ル・モンド」紙の記事によれば、3人が軽傷、1人が工事中の足場から転落して重傷を負い、震源地のテイユ村では250人が3つの体育館に避難したという。
 村では損壊した家屋も多く、9〜12世紀に建てられた教会や村の中学校、高校も被害を受け、国道は閉鎖された。アルデッシュ県知事は当面の間、家屋の中に入らないよう住民に呼びかけている。
 ある住民は「AFP」通信に対して、当時の様子をこう語る。
 「揺れが5秒くらい続いて、飛行機が突っ込んだみたいに、家具も壁も何もかもが揺れていました。(中略)地震の後、みんな外に出ました。人々はとても怖がっていました」
 地方紙「ル・ドーフィネ・リベレ」が11日に掲載した記事によれば、実はフランスでは年間およそ600回の地震が起こっているという。しかし、そのうち人間が感じる規模のものは10〜15回程度だ。
 今回と同規模のM5以上の地震が内陸部を震源として起こったのは、2003年に北東部ヴォージュ県を襲った地震(M5.4)が最後だった。今回の地震はじつに、16年ぶりの強い地震になる。

原発事故の不安──M5.4は想定外か

 今回の震源地周辺には原発が2ヵ所ある。震源地から23kmに位置するクリュアス原発と、26kmに位置するトリカスタン原発およびウラン濃縮施設だ。
 「ル・ドーフィネ・リベレ」紙の別の記事によればフランス電力(EDF)は地震後、クリュアス原発の4基の原発すべてを「詳細な点検」のために停止した。
 トリカスタン原発は稼働を続けているが、ウラニウム濃縮施設は一時的に停止されている。ただし、フランス原子力安全庁(ASN)の発表によれば、この一時停止は安全性の問題からではない。
 「リベラシオン」紙によれば、どちらの原発もM5.2までの地震には耐えられるように設計されている。だが今回の地震はM5.4であり、この規準に照らせば想定外だ。そのため、安全性に対する懸念の声があがっているという。
 フランスでの原発の耐震基準は、その地域で過去に起こった地震の最大マグニチュードを元に、0.5を加算する形で設定されている。今回の2ヵ所の場合は、1873年に起こったM4.7の地震に0.5をプラスしたM5.2が耐震規準である。
 「リベラシオン」の取材に答えたフランス放射線防護・原子力安全研究所(IRSN)のティエリー・シャルルは、今回の揺れは原発の安全性を脅かすものではないと言う。
 シャルルによれば、安全基準は震源が原発の真下にあると仮定した場合のマグニチュードで設定されており、震源から距離がある今回の地震にそのままあてはめることはできない。
 また、マグニチュードにはさまざまな尺度があり、安全基準の5.2というのは地表の地震波を想定したもののため、震央のマグニチュードとそのまま比較することはできない。地表のマグニチュードで言えば、今回の規模は4.5になるという。
 それでも、反原発団体「脱原発ネットワーク」はフランスのテレビ局「フランス2」のルポルタージュのなかで、日本の福島第一原発の事故を引き合いに出し、警鐘を鳴らしている。
 「今回より大規模な地震だって、過去には起きているんです。そして、福島の事故の例は(想定外の)もっと大きい地震が起こる可能性もあることを示しています」

COURRiER Japon

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